第5話 未来のハーレム計画

沙也加は手帳に書き込んだ「未来のハーレム計画」という文字を眺めていた。まだ漠然としていて具体的な形は見えないが、自分が作りたいもののイメージは徐々に固まりつつあった。


「まずは小さなことから始めよう」

そう自分に言い聞かせ、沙也加は大学内の掲示板に手書きのポスターを貼ることにした。


「未来のハーレム計画始動!」

「多様な人々が学び合い、成長できる場を一緒に作りませんか?」

「興味のある方は、このQRコードから登録を!」


シンプルだが、インパクトのあるポスターを貼り終えると、沙也加は少し緊張しながらも期待を抱いた。


数日後、QRコードを通じて集まったメンバーは6人だった。思っていたより少なかったが、沙也加は嬉しかった。6人の中にはラミーや、彼女が訪れたシェアスペースの絵里も含まれていた。


初めての集まりは大学の小さな会議室で行われた。沙也加は少し緊張しながら自己紹介を始めた。


「皆さん、集まってくれてありがとうございます。この計画はまだ始まったばかりですが、過去のハーレムの持つ文化的な意味を参考にして、現代に新しい学びの場を作りたいと思っています。具体的なアイデアはまだ曖昧なんですが……皆さんの意見を聞きながら、一緒に形にしていけたらと思っています」


少しの沈黙の後、メンバーの一人が手を挙げた。


「面白そうですね。でも、具体的に何をするのかが分からないと、参加者を集めるのが難しいかもしれません」


「確かにそうですよね……」沙也加は少し戸惑った。


すると、ラミーが口を開いた。「それなら、まずは小さなワークショップを開いてみるのはどうかな?」


「ワークショップ?」沙也加が聞き返すと、ラミーは続けた。


「例えば、文化や背景が違う人同士で交流する機会を作るんだ。簡単なテーマでディスカッションする場を作れば、自然と人が集まってくるんじゃない?」


そのアイデアに他のメンバーも賛同した。絵里は補足するように言った。


「それに、ただ話し合うだけじゃなくて、何かクリエイティブな活動を取り入れるのもいいかもしれません。アートとか、料理とか」


沙也加の中で次第にイメージが膨らんでいった。「ワークショップなら始めやすいし、参加者同士の交流も深まる……やってみよう!」


その翌週、「第1回未来のハーレムワークショップ」が開催された。テーマは「私たちが大切にするもの」。参加者たちは自分の文化や背景に基づいて大切にしている価値観を語り合い、紙に書き出して共有した。


「家族の絆が一番大事」

「私は自由な時間を大切にしてる」

「多様性って言葉自体が、私にとって重要な価値かな」


沙也加は参加者の言葉を聞きながら、「多様性」とは単に文化の違いを認めることではなく、個々の価値観を尊重することだと改めて感じた。


その日の最後、ラミーが一つの提案をした。


「このワークショップの結果を、何か形に残せないかな。例えば、展示会とか」


その言葉に参加者全員の目が輝いた。


ワークショップ終了後、沙也加は自分の手帳にこう書き記した。


「未来のハーレム計画は動き出した。まずは小さな一歩だけど、これがきっと大きな何かに繋がるはず」


まだ始まったばかりの計画。しかし、その中には沙也加の思い描く「現代のハーレム」の形が少しずつ見え始めていた。学び、交流し、成長する場所。かつてのハーレムのように、ただの閉ざされた空間ではなく、未来へと繋がる開かれた窓になることを願いながら。

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