第4話 現代のハーレムを探して
沙也加は帰国後も、ハーレムの意味を探る日々を送っていた。トプカプ宮殿で感じた「自由と束縛が同居する空間」という感覚は、彼女の中で忘れられないものとなっていた。
しかし、現代社会にそのような場所はあるのだろうか?
彼女はラミーに再び相談を持ちかけた。大学のカフェテリアでコーヒーを前にして、沙也加は意気込むように話し始めた。
「ラミー、現代の私たちの世界にも、ハーレムみたいな空間が必要だと思うんだよ。女性が守られながら、学び、成長する場所。だけど、それだけじゃない。もっと開かれた形でね」
「開かれたハーレム?」ラミーは眉を上げた。「面白いアイデアだね。でも、具体的にはどんな場所を想像してるの?」
沙也加は少し考えてから答えた。
「例えば、多様性を受け入れる場所。性別だけじゃなくて、国籍や文化、背景の違う人たちが自由に交流できて、でもお互いの領域を尊重し合える空間。昔のハーレムが女性を守るために存在したのなら、今度は全ての人が成長できる場所にしたい」
ラミーは静かに頷いた。
「それは素晴らしいけど、きっと多くの人が『そんな場所、現実には無理だ』って言うよ」
「そうだね。でも、無理だって決めつける前に試してみたいの。まずは小さなことからでいい」
沙也加は自分なりに「現代のハーレム」を模索するために、大学の仲間たちに声をかけた。「多様性をテーマにした学びの場」を作るというアイデアを説明したが、反応は様々だった。
「なんか理想主義すぎない?」
「いいアイデアだけど、それで何をするの?」
「具体的な活動内容がないと参加しにくいよね」
批判的な意見もあれば、共感する声もあったが、沙也加は改めて「ハーレム」という言葉の現代での難しさを感じた。
「やっぱり、言葉が持つ偏見を変えないと進めないのかも……」
そんな中、沙也加はある女性からのメッセージを受け取った。彼女は講演会で偶然沙也加の話を聞いたという。
「ハーレムの本来の意味に興味があります。私も、女性が学びやすい環境を作りたいと思っています。ぜひお話しさせてください」
メッセージをくれたのは、社会人で働きながら「女性のためのシェアスペース」を運営している田辺絵里という女性だった。
沙也加と絵里は数日後、駅近くのカフェで出会った。絵里は30代後半の落ち着いた雰囲気の女性で、自分の経験を語り始めた。
「私ね、前の職場ですごく苦労したんです。上司は男性ばかりで、意見を言おうとするといつも軽く流されて……だから、自分たちで女性が気軽に意見を出し合える場所を作ろうと思ったんです」
彼女が運営するシェアスペースでは、働く女性たちが集まり、スキルを学んだり、悩みを共有したりしているという。その話を聞き、沙也加は目を輝かせた。
「それって、現代のハーレムみたいですね!」
「ハーレム……か。なるほど、そんな見方もできるかもしれませんね。でも、私たちはもっと男性や多様な人々も巻き込んでいきたいと思っています」
その言葉に、沙也加の心が動いた。絵里の活動は、彼女が描く「現代のハーレム」に近いものだった。だが、それをさらに広げ、多様な人々が共に学び合う場にするにはどうすればいいのか。
カフェを出た後、沙也加は新たな決意を胸に歩いていた。
「私が考えるハーレムは、ただ女性のための場所じゃない。過去のハーレムがそうであったように、学びと成長の場を作ることが大事なんだ」
そう考えたとき、彼女の手帳にまた一つのアイデアが書き加えられた。
「未来のハーレム計画」
「誰もが学び、共に成長できる場所」
沙也加の新しい挑戦が、静かに動き出そうとしていた。
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