第7話 さよならソフィア、そして新たな決意

遺跡の探索を終えたワイらは、月明かりに照らされる森の小道を歩いていた。ソフィアは無言で、時折遺跡で発見した魔法の石を確認している。

「あのさ、ソフィア。このあとどうするんや?あとそれワイの石やで」

ワイが声をかけると、彼女は顔を上げて微笑んだ。

「別に奪おうなんて思ってないわ。まぁこの後は故郷に帰ってしばらく休もうかなって。」


その返答を聞いて、なんとなく胸の中に小さな寂しさが芽生えた。だが、それを言葉にする勇気も理由もワイにはなかった。



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帰り道の途中、不意にソフィアが立ち止まった。

「…タスたけ、今何か聞こえた?」

「いや、何も聞こえへんけど…気のせいやないか?」

ワイがそう答えた瞬間、ソフィアが突然悲鳴を上げた。


「いやぁっ!ちょっと!何するの!」

えっ、なんや!?とっさに見下ろすと、ワイの毛むくじゃらの腕がソフィアの肩を掴んでいた。いや、正確にはワイの意思じゃなく、毛が勝手に動いてソフィアを包み込んでいたのだ。

「ちゃうねん!これワイがやったんやない!毛が勝手に…!」

慌てて手を引こうとするも、毛は意志を持ったようにさらに彼女に絡みついていく。


「やめて!タスたけ!」

「いや、ちゃう言うてるやん!こっちも止めたいんやけど毛が!」

その状況をなんとか解消したのは、ワイの毛を一本一本ナイフで切り裂くソフィアの冷静な対応やった。やっと解放された彼女は、息を荒げながらワイを睨みつけた。


「…何がしたかったの?」

「ほんまにちゃうねん。毛が勝手に動いただけや!」

「そんなの言い訳にしか聞こえないわよ!」

ソフィアはワイの言葉を信じてくれへんかった。けど、その怒りも一時的なものやった。



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森を抜けた後、ワイらは小さな野営地を作り、少し気まずい空気の中で火を囲んだ。しばらくしてソフィアがぽつりと口を開いた。

「ごめんなさい…さっきはちょっと取り乱したわ。冷静に考えたら、本当にあなたが意図してやったことじゃない気がする。」


ワイはほっと胸を撫で下ろした。

「わかってくれたならええんやけど…ワイもビビったわ。毛が勝手に動くとか、これもう妖精とかいうレベル超えてるやろ。」

ソフィアはクスッと笑ったあと、真剣な表情で言葉を続けた。


「これで私は目的を果たしたから、明日にはここを離れるわ。」

「そうか…」

ワイの返事は短く、それ以上何も言えへんかった。彼女の決意を引き止める理由がワイには見つからなかったのだ。



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翌朝、ソフィアはワイに別れを告げた。

「タスたけ、あなたのおかげでここまでこれたわ。本当にありがとう。」

「まあ、元気でな。」

あっさりした会話やったけど、心の中ではもう少し引き止めたい気持ちがあったのは否めへん。でもそれを口にすることはせんかった。彼女は軽やかな足取りで森を抜けて行った。


村に帰り着くと、ワイを待っていたのは村人たちの笑顔と拍手やった。

「タスたけさん、戻ってきてくれてありがとう!」

「遺跡での成果、期待してますよ!」

「また妖精の毛で村を守ってくださいね!」


みんなワイを囲み、口々に感謝の言葉を述べてくる。正直、ワイはそんなに特別なことをしたつもりはないんやけど、村人たちはワイの存在そのものをありがたがってるみたいやった。


「あ、ああ…。まあ、みんな元気そうでよかったわ。」

とりあえず適当に返事をしながら、ワイの胸の中は複雑な感情でいっぱいやった。この村で頼られるのはうれしい。でも、ワイはそれを重荷に感じてしまう自分もおる。


村人たちの熱烈な歓迎を受けたその夜、ワイは静かに村を見渡した。

「…なんやろ、もうええんちゃうか、こんな生活。」


妖精扱いされてちやほやされるのも疲れたし、毛の力を過剰に期待されるのももううんざりや。村人たちの笑顔を見ても、心は重いまま。


ワイはこっそりと村を出る準備を始めた。食料や水をリュックに詰め、地図を確認する。幸い、誰もワイの行動に気づいてへん。


「こんな毛むくじゃらでも、もっと自由に生きてもええんやろか…」

そう呟きながら、ワイは次の朝を迎える準備をしていた。

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