第6話 毛むくじゃらの救世主と虫の力
遺跡の奥に進んでいくと、空気はどんどん湿り気を帯び、薄暗くて冷たい風が吹き抜けた。壁には不気味な苔が生えており、時折、遠くから「カサカサ」と音が聞こえてくる。フィオナとワイは慎重に足を進めた。
「うーん、ここも魔物の気配はないな……でも、何かおかしい感じがする。」
ワイは毛むくじゃらの体を少し揺らしながら、周囲を警戒していた。後ろでは、あの虫が相変わらずワイの毛の中でチョロチョロと動き回っているのが感じられた。
「なあ、フィオナ。虫、役に立つかもな。あいつ、なんか気づいてるみたいだし。」
「虫?まさか、あの毛の中に住み着いてる虫が?」
ワイが振り返ると、フィオナは少し疑わしそうに言った。しかし、ワイは確信があった。あの虫が動き回るたびに、どこかで不安を感じているはずだった。
「せや。ずっと毛の中におったけど、なんか感じ取ってるような気がするんや。」
フィオナが少し眉をひそめながらワイの毛の中を見た。その時、ワイの毛が突然、ぴんと張りつめたように硬直した。背中に感じた「ざわざわ」という音が、今までとは違って少し違和感を帯びてきた。
「うーん?何か感じる……!」
フィオナが声を上げた瞬間、突然、遺跡の奥からガラガラと音が鳴り響き、土埃が舞い上がった。何か巨大なものが動き始めたのだ。
「やばい!魔物か!」
ワイとフィオナは立ち止まり、周囲を警戒した。すると、目の前の石壁が突然、崩れ落ち、巨大なゴーレムのような魔物が姿を現した。その魔物は、岩の塊のような体に、燃えるような目を持っていた。
「うわっ、でかっ!」
フィオナは剣を抜き、前に立つが、どう考えてもそのゴーレムには太刀打ちできそうにない。
「これ、どうすんねん……?」
ワイは悩む暇もなく、すぐにそのゴーレムに向かって突撃しようとしたが、突然、ワイの毛の中から「ざわっ」と音が響き、虫が一気に毛の中から飛び出した。
「お、おい!?」
その虫は驚くほど素早く動き、ゴーレムの足元にまっすぐ向かっていった。そして、ワイが目を疑うほどの速さで、ゴーレムの足元の隙間に入り込み、その中に隠れている何かに「ガリッ」と噛みついた。
「何や、こいつ!?」
フィオナも驚きながらその虫の動きを見守った。虫は、ゴーレムの内部に何か重要な部位があることを見抜き、その部分に必死に食らいついている。
「いや、あれは!?」
ワイが目を凝らすと、ゴーレムの足元にある岩の中に、魔物を動かすための「魔法の核」が埋め込まれているのが見えた。その虫は、それを探し当てていたのだ。
「まさか、こいつ……!」
虫は一度、ゴーレムの足元から飛び跳ねて、そのまま勢いよく一瞬でゴーレムの背中に回り込んだ。そして、ワイの毛の中から出てきたその虫は、ゴーレムの中心にある魔法の核を一気に引き裂いた。
その瞬間、ゴーレムはバラバラに崩れ落ち、動かなくなった。
「おおおおおおっ!?」
ワイは目を大きく見開き、フィオナも呆然とその光景を見ていた。
「な、なんだ……?あの虫が、まさかゴーレムを倒すなんて……」
ワイは、自分の毛の中に住み着いた虫を見て、思わず声をあげた。
「おいおい、どういうことや……?お前、そんな力持ってたんか?」
虫はワイの毛の中に戻り、また少し動き回った。どうやら満足そうにしているようだ。
「まさか、この虫、ゴーレムの魔法の核を破壊できる力を持ってるんか?」
フィオナは驚きとともに、目を見開いて言った。
「やるじゃない、あの虫。あんた、意外に頼りになるわね。」
ワイは頭をかきながら笑った。
「いや、ほんまにびっくりやな。あんな小さな虫が、こんな大きな魔物を倒すなんて思わんかったわ。」
虫はその後、再びワイの毛の中に戻り、満足そうにくつろいでいる。その存在は、もはやワイにとっては「毛の中の小さな守護者」のような存在となった。
---
その後、遺跡の奥で無事に魔法の石を手に入れ、村に戻ったワイとフィオナ。村人たちは驚きながらも、ワイの毛の中に住みついた虫が実は強力な力を持つ存在であることを知り、ますますワイの毛むくじゃらの体に興味を持つようになった。
「これからはあの虫も、ワイの仲間やな。毛の中のヒーローってわけや。」
ワイは少し照れながら、毛を撫でて虫に感謝の気持ちを込めてつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます