第5話 遺跡の冒険と毛むくじゃらの新たな住人
フィオナとワイは、村からかなり遠く離れた森の中を進んでいた。周りは不気味な静けさに包まれ、木々の間から時折、異様な音が響く。何かが潜んでいるような感じがして、ワイの毛むくじゃらの体が少しひやりとした。
「遺跡の場所はこの辺りのはずなんやけど、なんか雰囲気が怖いな。」
フィオナは慎重に周囲を見渡しながら、答える。
「確かに、魔物も多いと言われている場所だから、気をつけて進まないと。あ、でも……」
フィオナが指を差しながら話し始めた。ワイはその先を見ると、暗い森の中に古びた石造りの遺跡が見えた。
「うわっ、あれが遺跡か。」
ワイは少し驚きながら、その遺跡に近づいて行った。途中、何度も木の枝や茂みをかき分けながら進み、ようやく遺跡の入り口にたどり着いた。
「これが……魔法の石があるという遺跡か?」
フィオナは遺跡の入り口をじっと見つめながら、頷いた。
「ここに入っていけば、魔法の石を手に入れられるかもしれない。でも、気をつけて。魔物の巣窟になっていると言われているから、油断できないわよ。」
ワイは大きな息を吸い込んで、いざ遺跡に足を踏み入れようとしたその時、突如、頭の中にかすかな「ざわざわ」という音が響いた。
「ん?何や、この音……?」
その音に耳を傾けると、なんだか背中がムズムズしてきた。突然、ワイの体に何かが絡みついた。
「うわっ、何や!?」
振り返ると、見覚えのない小さな虫がワイの毛に絡まっていた。その虫は黒い体に青い縞模様があり、どうやらワイの毛の中に潜り込もうと必死に動いている。
「な、なんやこいつ!?毛に入り込んでくる……!」
フィオナは驚きつつも、少し冷静に観察していた。
「その虫、あんまり見たことがないわ。でも、毛に入り込むのはちょっと珍しいわね。」
ワイは必死に虫を払おうとしたが、虫はしぶとくワイの毛の中に入っていった。
「ちょ、待て!なんでこんなところに入ろうとしてんねん!」
虫はどんどんワイの毛の中に潜り込み、最終的にワイの背中の毛の中にすっぽりと収まった。完全に住み着いてしまったのだ。
「え……ちょ、待って!こいつ、毛の中に住み着いたんやけど!」
フィオナは少し呆れ顔でワイを見たが、すぐにくすっと笑った。
「おかしいわね、その虫、どうやらあなたを気に入ったみたい。あなたの毛が気に入ったんじゃない?」
ワイはしばらく自分の背中をかきながら考え込んだ。
「なにが気に入ったんや……?」
その時、背中の毛の中で「ざわざわ」という音が再び聞こえ、虫が一生懸命に動き回っている様子が伝わってきた。どうやら、毛の中でくつろいでいるようだ。
「おい、なんやそれ!どんな感じなんや!?」
ワイは背中をさすりながら虫に向かって話しかけたが、虫は何も答えない。ただ、時折、ワイの毛をくすぐるように動き回るだけだった。
「どうやら、かなり居心地がいいみたいね。その虫、あなたの毛の中で寝泊まりするつもりかしら。」
ワイは無意識に自分の毛を触りながら、頭を抱えた。
「ちょ、まってくれ……こいつがずっと毛の中に住むつもりなんか?あかん、これじゃ遺跡探索どころじゃなくなるで!」
フィオナは笑いながら、ワイの背中を指差して言った。
「でも、なんだか面白いわね。この毛むくじゃらの体、どこにでも住み着くんだ……」
「そ、そんなこと言うな!ワイが毛むくじゃらやからって、虫まで寄ってくるのはおかしいやろ!」
フィオナはしばらくワイの頭を撫でながら言った。
「でも、もしかしたらあなたの毛、色々な生き物にとって心地よい場所なのかもね。」
ワイはますます顔を赤くして、手で背中をかきながら遺跡に向かおうとした。
「もう……ほんまに、虫にも好かれるなんて、どうなっとんねん!」
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遺跡の中へと進んでいく中、ワイは気を取り直して、虫が毛の中にいることを気にしないようにする。フィオナもその様子を見て、何度も笑いをこらえていたが、二人とも何とか遺跡の奥に進み続けた。
「さて、遺跡の中は魔物がいると言われてるけど、何が待ち受けているのか、少し楽しみだわ。」
ワイは少し冷静を取り戻し、遺跡の深部に向かって進んだ。その背中には、どうしようもない虫が住み着いていることを忘れないようにしながら。
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