第3話 毛の力と、守護者としての試練

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翌朝、村の小人たちが騒ぎ始めた音で目が覚めた。


「妖精様、大変です!村の畑が荒らされました!」

「……畑?」

寝ぼけた頭を振りながら、外に出ると、広い畑が目の前に広がっていた。しかし、その一部が無残にも掘り返され、作物が散乱している。


「これ、また魔物か?」

老小人が神妙な面持ちで頷く。


「おそらく『土食い蛇』という魔物でしょう。畑の根を掘り起こし、全て食べ尽くしてしまう恐ろしい生物です。」


「またワイが行くんか……」

溜息をつきつつ、昨日のイノシシを思い出す。毛むくじゃらの力があれば、何とかなるかもしれない。



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現場へ向かう


小人たちに案内され、荒らされた畑のさらに奥へ進む。そこには大きな穴がぽっかりと開いていた。


「この中に奴がおるんやな?」

「はい。土食い蛇は夜に動き回ることが多いですが、昼間はこの穴の中で休んでいるはずです。」


ワイは穴の中を覗き込んだ。暗闇が広がり、底が見えない。


「……いや、ワイ、蛇とか苦手なんやけど。」

「妖精様ならきっとお力を発揮できます!」

村人たちの期待に満ちた視線を受け、渋々穴に足を踏み入れる。



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穴の中はひんやりとしていて、湿った土の匂いが鼻を刺した。


「おるんかー?」

声を響かせると、どこからか低いうなり声が返ってきた。


「……嫌な予感しかしないな。」


次の瞬間、大きな赤い目が暗闇の中で光った。蛇のような頭部が現れ、その鋭い牙をむき出しにして唸り声を上げる。


「お、お前が土食い蛇か!」

蛇は一気に突進してきた。



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毛の能力、進化する


蛇が牙を振り下ろす直前、ワイの体が再び反応した。毛が逆立ち、全身を包み込む防御態勢を取る。


「おお、またや……!」

蛇の牙が毛に弾かれる音が響く。しかし、それだけでは終わらなかった。


「うおっ……?」

毛がさらに伸び、蛇の胴体に巻きついていく。まるで自ら意志を持っているかのようだ。


「これ、攻撃もできるんか!」


毛は蛇の動きを完全に封じ込め、その巨大な体を締め付け始めた。蛇は苦しそうに暴れるが、毛の拘束から逃れることはできない。


「すげえな、ワイの毛……!」


蛇が完全に動かなくなると、毛が元の長さに戻り、光を失った。



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村への帰還


蛇を倒し、村に戻ると、小人たちが歓声を上げて迎えてくれた。


「妖精様、ありがとうございます!」

「これで畑を守ることができます!」


ワイは適当に手を振りながら、村の中心に戻った。正直、毛の力には驚きっぱなしだが、使い方がまだよくわからない。


「なあ爺さん、この毛、何なんや?どうしてこんな能力があるんや?」


老小人は石碑を指差した。


「この森に伝わる伝説では、毛むくじゃらの守護者は神獣の力を受け継ぐ存在とされています。妖精様は、神獣の力をその身に宿しているのでしょう。」


「神獣、か……」



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夜が明け、村は静かな朝を迎えていた。ワイは、村長や村人たちと共に囲炉裏を囲み、今後について話し合っていた。


「……なあ、爺さん。」

「はい、妖精様。」

「そろそろ魔物ばっかり相手にしとるのも限界やで。ワイがいなくなったら、村はどうするつもりや?」


その言葉に老小人は考え込んだ。


「確かに……妖精様がおられなければ、村の守りが脆くなってしまいます。」

「せやろ?だから今のうちに、村をもっと強くする方法を考えた方がええんちゃう?」


ワイの提案に、村の小人たちは顔を見合わせた後、深く頷いた。


「妖精様のご提案、是非ともお聞きしたいです!」

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