第八章 媚びぬ
神中洲のMacに集合した。来る途中すべての人間が驚愕と嫌悪と畏怖と蔑みで顔を顰め、呆れたようにイタルを眺めた。
「やってくれたぜ。このクズ野郎。もう怒る気にもなんねー」
叭羅蜜斗がアイスコーヒーのストロー咥えながら言うとイタルは、
「つまんねーな。パンク野郎ってのはな、いつでも怒ってるモンだぜ」
「へっ」
鼻先で嘲笑う叭羅蜜斗。路を歩いていても店内にいても、誰もがイタルを振り返り、誰もが瞠目し、それから眼を合わせないよう凝視した。ヤンキーどもも絡み方がわからないようだった。
「どこでそんなもの彫ったんだ」
〆裂が面白そうに訊く。
「知り合いさ。おれには芸術家の知り合いが多いのさ」
「確かに腕は良いみたいだ。凄く美事だ」
普蕭は思わず頷く。
イタルは面倒臭そうに言う、
「ンなことよりか、次のライブをしようぜ」
「メジャーになりたくないんじゃなかったのか? て言うか、オレたちを出すところなんぞ、この辺りじゃもうないぜ」
「別にメジャーだっていいさ。一々気にしなくていいぜ。燃え尽きたいんだ。Very Very Well-doneにな。世間なんざかんけーねー」
〆裂が腕を組んだ。
「路上ライブってことか。
まあ、誰も見てない山ん中でもいいけどな、俺は」
イタルが頷く。
「どっちでもいい。オーディエンスなんて糞だ。いてもいなくてもいい。おれは勝手に燃えて、勝手に燃え尽きるだけさ。彗星みたいなもんだ。
ふ」
「とりあえず公園でやろうか。薙久簑町の中央公園辺りでどうかな。
山の中ってのは最後の最後にしよう」
普蕭がそう言うとイタルは、
「おれもそれは最後に取って置くつもりだ」
と、ぞっとするような微笑を浮かべて言った。
「普蕭、叭羅蜜斗、〆裂、おれはもっとオリジナル曲を作っておきたい」
それは理に適っているように思えた。
四人は数週間、普蕭のスタジオで作曲に努め、その様子を寛太嘉やまあやが録画し、ネットにアップした。その頻度は次第に増えていったが、頻繁に来るのは兄ではなく、妹の方だった。
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