第18話 憧れ、降臨
【注意書き】
今回はいろんなセリフが混在しているので、注意書きを載せておきます。
「」は喋っている内容、『』は配信内コメント、*はゲーム内チャットです。
―――
突如として表示された共闘クエストのお誘い。
そこに表示されていた名前に満もリスナーたちも固まってしまう。
『ファッ!?』
『おいおい、マヂかよ・・・』
『レニたんktkr』
そう、リスナーが騒ぐ通り、画面には『真家レニ』の名前が表示されていたのだ。
『もしや、レニたんがこれを視聴してるのか?』
『おいおい、人呼べ。これは祭りだぞ』
「これは、本物でしょうかね……」
満はごくりと息を飲む。思わぬ展開に素が出てしまいそうになっている。
だが、その答えはすぐに分かった。
『【真家レニ】レニちゃん降臨!にししし・・・』
『も、ものほんだーっ!』
コメント欄に青文字のコメントが出る。
特殊なカッコに囲まれて間違いなく表示される『真家レニ』の名前。どうやら共闘クエストを申し込んできたのは、真家レニ本人に間違いなさそうだった。
この青文字とカッコ書きの名前は、チャンネル持ちのアカウントだけに表示される特別な仕様なのだ。
『【真家レニ】いやぁ、久しぶりに動画あさりをしていたら、興味深い配信を見つけて遊びに来たよ』
本人いわく、今日は配信をしない日で面白い動画がないか探っていたらしい。そこで『SILVER BULLET SOLDIER』の配信をしている満のチャンネルを見つけたらしい。
自分の憧れで人気配信者である真家レニの乱入に、満は一気に緊張が高まっていく。
『【真家レニ】ほらほら、受けるの受けないの?時間もったいないよ』
満に選択を迫るレニ。憧れの配信者にこんな事を言われては、満の選択肢はひとつしかなかった。
「おほん。も、もちろん受けさせて頂きますわ」
承認のボタンをクリックする満。
*【真家レニ】そうこなくっちゃ。それじゃクエストはレニちゃんが選んじゃうぞ
「真家レニ様にお任せ致しますわ」
ゲームを始めたばかりの満には何も分からないので、ここは大先輩に任せる。
*【真家レニ】任された。それじゃ、初心者の君に合わせて、これにしようか
ゲームのチャットにレニの打ち込みが表示される。それを見ながら満は反応している。
『おいおい、初心者との共闘でそれ選ぶなよ』
『レニちゃん、遠慮なくて草』
『もうちょっとこう手心というものをお願いしたいわー』
リスナーたちはゲームのことを分かっているのか、コメントはかなりツッコミの様相を呈している。状況が分からない満は首をかしげるばかりだ。
だが、レニがクエストを選んだことで、ゲームが進行する。
*【真家レニ】すべてはレニちゃんにお任せだ
「お、お手柔らかにお願い致しますわ」
共闘クエストで表示された場面は、山荘のようだ。
勝利条件が表示されるのだが、変異種狼男を倒すというのがその条件のようだった。
*【真家レニ】始まるよ、覚悟はいーい?
「も、もちろんですわよ」
やる気十分のレニに対して、満はもうやけくそだった。リスナーのコメントのせいでめちゃくちゃなのが予想できたからである。
*【真家レニ】このクエストの目的は、山荘の死守。四方八方、それと床から現れるゾンビたちをぶっぱすればいいの。10分間粘るとボスの変異種狼男が出るから、それを倒してクリアだよ
レニの解説に、リスナーたちは頷いているようだ。そういう感じのコメントが流れていく。
レニの参戦で、どんどんと視聴中の人数が増えていく。さすがは人気の配信者真家レニである。
*【真家レニ】レニちゃんはFPSモードだから、背中側お願いね
「わ、分かりましたわ」
クエストが始まると、言っていた通り四方八方からゾンビたちが襲い掛かってくる。窓やドアを破って入ってくるゾンビたちのリアルさに、満は心臓が飛び出そうな気持ちでゾンビたちを倒していく。
満が一体撃破している間に、レニは数えきれないくらいのゾンビを撃破している。さすがはプロレベルとど素人である。
時間が半分経過すると、今度は朽ちた床を突き破ってまでゾンビが乱入してくる。
さすがの恐怖に、満は「ひぃっ!」とか「うわぁ!」とか悲鳴しか発言していなかった。
『力の差が歴然過ぎる』
『そりゃそうだ。タイムアタックでトップテンに入れそうな実力者と、始めたばかりの子だぞ』
『今北産業』
『ルナち配信、レニちゃん乱入、ゾンビフルボッコ』
『説明助かる』
『今ので分かるんかい!』
コメント欄はコメント欄で盛り上がっている。しかし、今の満にそんなものを見る余裕などなかった。
*【真家レニ】よっし、10分経過
『よくあの状況で打ち込めるな』
『だからレニちゃんなんだよ』
突然咆哮が響き渡る。
画面には『BOSS襲来。外に出て撃破しましょう』の文字が表示される。
*【真家レニ】外に出るよ
「分かりました」
レニが通路を作ってドアから山荘の外に出る。
本当ならこういう場ならボイスチャットなのだろうが、急だったこともあってテキストチャットである。それでもこの的確なチャットを打ち込むとは、真家レニとは一体何者なのだろうか。
ずっと山荘の中で分からなかったが、外のグラフィックは真っ黒。つまり夜中だった。
だが、その真っ暗な闇夜の中にひときわ目立つ大きなグラフィックが立っていた。
「グウォオオオオンッ!!」
これが変異種狼男。この共闘クエストのボスなのである。
あまりの巨体から放たれるゲームとは思えない迫力に、満は体を震わせたのだった。
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