第46話

「……プチ」

 眼鏡式ボイスレコーダーを止める音。

「……」

 さっきと一切変わっていないが、手元が少しだけ震えている。

 それも、何故か左手だけ。

 それ以上に何故、鳴海坂昴は、決して外部に漏れることのない、インカム越しの会話を聞き、ましてやスマホ音源して録音することができたのか?

 確かに、外部に会話を洩れることは、ほぼゼロに近い。

だか、ごく稀に至近距離で聞き耳を立てられると、人によったら会話を訊かれてしまうことがある。

でも、それもあくまで稀で、本当に至近距離まで近づかなければ、訓練した人間ではない限り、インカム越しの会話を全て把握し、ましてや録音することは不可能。

野口が知り限り、今までそれをやってのけたのは……独りしかいない。

「……これは、野口さん! 村瀬さん! お二人の会話をこの眼鏡型ボイスレコーダーで録音した物です! あぁそうだ! お二人の会話を録音していたら、こんな会話まで録音されていたのですか?」

 再び、眼鏡式ボイスレコーダーを再生する。

『それにしても、うちの所長? あぁ見えて、意外と人脈多いよなぁ?』

『はぁ? お前、それ本気で言ってる?』

『はぁ? 斗真? あの人、一応うちの事務所の所長だぞ。人脈あるに決まってるだろう? それに、出来るなら2度と口にしたくないけど、黒鳥恭輔のこと2代目judge 海月梓の元相棒なんだから、これぐらい人脈糞ぐらいだろう? それに正直言って、城谷所長が嫌いなんだよ?』

「……」

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