復讐と言う名の花束
第27話
自宅 但し、美緒捜索の為に借りている方。
「……はぁはぁ。おかえり。これが、親友の俺だからいいけど、これで、赤の他人だったら、お前殺されるぞ!」
事務所から自宅(但し別宅)に帰って渚を大きな紙袋を持った昴が過呼吸寸前の状況で渚のことを待っていた。
「……ただいま。あれ? 昴? もう黒百合用意できたのか? 早かったなぁ?」
靴を脱ぎながら、そう昴に尋ねる渚。
「はぁ? こっちは、お前が2時間以内とか無茶苦茶なこと言うから、必死に用意したんだぞ! 近隣の花屋捜しまくって」
やっぱり、自分が働いているフラワーショップ「ホワイト」には、黒百合は、なくて近隣に花屋を何か所が梯子して、ようやく生花ではないが、ドライフラワーのそれも黒百合と何種類の百合(白と黄色)を使用したフラワーアレンジメントを見つけることが出来た(価格は5000円、渚の名前で、領収書を貰った)
渚は、そのフラワーアレンジメントが入った紙袋を渚に優しく手渡す。
「あとコレ?」
例の領収書も忘れずに渚に渡す。物だけ受け取って、逃げられても堪ったもんじゃないので。
こっちだって、給料前で金がないんだから。
「なにこれ?」
「なにって? 黒百合の領収書だよ! お前まさか? その黒百合? タダで貰おうと思ってる?」
「そのつもりだけど?」
まるで、ただで貰うのは当たり前のような、渚の態度に、昴は堪らず、
「あのなぁ? 俺が、どんな思いでその黒百合を用意したと思ってる? それに、お前から俺に頼んだんだろう? だったら、全額払って貰わないと俺も、困るんだけど?」
いつものだったら、こんな風に渚につっかからない。
けれど、今日は、渚は、いつもと違って、なにかがおかしい。
確かに、今から自殺すると渚にメールを送ってきた草津千里の自殺を止めたくて、自分に黒百合の用意させる気持ちがわかる。
だけど、本当にそれだけの為だけに自分に、黒百合を用意させたのは、昴には、どうしてもそう思えない。
渚は、まだ、自分になに隠していることがあるのではないか?
そう思えてなれない。
その証拠に……
「…解ったよ? 払えばいいんだよ。ほら? 5000円」
と財布から5000円札を取り出し、自分に渡してくる。
「これいいんだろう。 なんだよ? まだなにかあるのかよ?」
「いやぁ? ああのさ? 俺にまだなに隠してることないか?」
「……別にないけど」
「そう。なぁ? 渚? 渚にとって、草津千里って、どういう存在?」
「草津? そうだなぁ? 腐れ縁?」
「腐れ縁?」
「まぁ? いま、あいつにいなくなられると、からかう相手が、昴! お前だけになっちまうだろう!」
「……そうだねぇ? きみが興味があるのは、美緒さんだけだもんねぇ?」
そうだよねぇ? 僕だって、きみとって、からかい相手の一人なんだねぇ?
昴は、渚から受け取った5000円を見つめながら寂しそうにつぶやく。
「はぁ? 昴! お前、なにか勘違いしてるだろう?」
「えっ?」
「確かに、俺は、美緒以外の人間に興味がない! それはこれからは変わらない。だからって、お前やまぁ? 草津千里? お前らに興味がないっていつ言った? 言ってないだろう?」
「渚?」
渚の思いもしなかった言葉に、昴の目から涙が零れる。
「なに泣いてるだよ! キモ」
いきなり泣き出した昴に、「キモ」と言いながらも、ハンカチを差し出す渚。
「……全く。泣くのは、俺が、美緒を略奪したあとにしてくれよ?」
渚が、自分の為に差し出してきた白いハンカチを受け取りながら、親友兼相棒の渚に向かって、
「任せろ! 相棒」
「あぁ! だから、余計な心配してんじゃねぇバカ」
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