第21話

「なんて、俺なら全然大丈夫だよ。なんせ、寂しい独り者だから」

「本当に、本当にすみませんでした」

 自分に対して、頭を下げてくる杏奈に大丈夫だと首を左右に振る。

 そして、申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。

「茉莉川さん。話しを草津の事に戻すんだけど、俺、あいつの連絡先知らないんだ。だから、茉莉川さん。君に助けになりたいんだけど、僕にはどうすることもできないんだよねぇ? 折角頼ってくれたのに!」

「そんなことないです。泉石先輩は、私の話しを聞いてくれました。それだけで嬉しかったです。」

 渚からのまさかの発言に、一瞬驚きの表情を見せる杏奈。

 しかし、すぐさま元の顔に戻す。

「そこで提案なんだから、他の人に訊いてみるのはどうかな? あぁ! 例えば! 柿谷課長だったら知ってるじゃあないかな? 草津の連絡先」

「……」

「茉莉川さん? どうかしたの?」

 急に黙り込んでしまった杏奈の顔を今度は、渚が、心配そうに見つめる。

「!? あぁ! 大丈夫です」

「本当?」

「はい。けど、泉石先輩! 私、柿谷課長の連絡先知りません」

 嘘。でも、ここで言えるわけがない。

「それなら大丈夫。俺が電話してあげるから!」

 ポケットから携帯電話を取り出し、柿谷に電話をしようとした瞬間……

「せんっせせ泉石先輩!」

 大きな声で杏奈が渚の名前を叫ぶ。

「ん? どうしたの?」

「自分で掛けます。なので……」

「あぁ! そうだよね? ごめん! あぁ! ちょっと待っててね」

 渚は、柿谷の連絡先をテーブルに置いてあったメモ用紙に書き写す。

「はい茉莉川さん。これが、柿谷課長の連絡先」

「あぁあありがとうございます」

「いえいえ。課長知ってるといいね? あぁそうだ! これ、よかったら、草津と一緒に食べて……ごめんね? 力にならなくて」

「いえ。私こそ、すみませんでした」

「ううん。じゃあ、俺はもう行くね」

「はい。お疲れさまでした」

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