第17話

「えっ? 死のうとしている? 草津千里が? なんで?」

 渚から返ってきたのは、草津千里が、今日、これからまさに自殺しようとしているという内容だった。

 確かに、草津千里は、恋人の茉莉川杏奈に不倫をされた。

 それも、不倫相手は、まさかの自分の直属の上司である柿谷霧矢。

 だけど、それだけで、彼が自ら自殺を選ぶとは、昴には到底思えない。

「知るかよ! けどまぁ? 今、ここであいつが死んだら、あいつらの思うつぼだろうなぁ? それだけは、まぁ? 可哀想だろ?」

「……渚」

「誤解するなよ! 俺の目的は、あくまで美緒の略奪で、草津千里のことは……まぁ? おまけ! おまけ! 解ったら、お前も! 黒百合用意しろよ! いいなぁ!」

 最後の方は、強制的に黒百合の花束を用意するよう昴に命令すると、残っていたビーフシチューを一気に口に放り込み、独り会計を済ませ、喫茶店「rose」から出て行ってしまった。

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