第18話

「……全く、素直じゃあないだから」

 一人残されられた昴は、さっきまで渚がいたテーブルを見つめながら、小さな声で呟く。

「だけど、そんな、きみの事が心配だから、僕は、あの日から、きみの傍にいるんだけどねぇ?」

 4年ぶり(高校卒業以来)に再会した親友は、どういう訳か、探偵事務所で働く探偵になっていた。

 そして、俺自身も、いつの間にかこいつの仕事を、いやぁ? 渚は、この6年間ずっと自分の元から居なくなった(正確には父親の転校だけど)美緒さんの居場所を捜し求めていた。

 渚がサラリーマンから探偵に転職したのも、美緒さんに関する情報を集める為。

 だけど、この6年間、美緒さんを見つけることはできなかった。

だからこそ、あいつは俺を……いやぁ? 俺が、持つ特殊能力(透明化)を利用することを考えた。

 俺の特殊能力「透明化」は、自分の身体を透明にできるだけではなく、自分が触れている間、自分以外の物も透明化することが出来る。

 その為、俺は、なるべく、素手で他人に振らない様にしていた。間違って触れた人を透明化しない様に。

 あと、この特殊能力にことは、家族勿論、友人にも決して話せなかった。

 それなのに、何故か渚だけは、自分が隠していた特殊能力のことを知っていた。

「鳴海坂は……消すんだろう? 自分の身体? だったら、手伝ってくれないかな? 俺の仕事」

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