第16話

『すみませんが、今日の会見がこれで終了します』

突然、謝罪会見場にやってきた警察によって緊急逮捕された文彦和彦。

 その一部始終を見ていた新聞社や出版社及び報道関係者。

 そして、今回の謝罪会見をテレビ中継していたテレビ関係は、パニック状態。

 まさに地獄絵図。

 そんな光景を見ながら、渚と昴は、互いに注文したビーフシチューとナポリタンを食べながら、

『……お前? 最初からこれを狙っていたのか? だからこそあえて、この日を狙ったのか?』

 3日前、昴は、渚から、ある人物に、文彦和彦の人身売買の証拠が記録された動画をある人物に匿名に送り付けろと頼まれた。

 でも、まさか、その人物が、警察それも警察庁の刑事だとは思わなかった。

『……まぁねぇ? 野口さんから、文彦和彦が一週間以内にメディアを集めて、大規模の謝罪会見をするらしいって、事前に情報を得たから、美緒の件で一緒に、警察に逮捕して貰おうと思うって、知り合いの映像作家に頼んでフェック動画を作って貰った』

『そうなんだ。そこについては、触れないでおくよ?』

 渚には、知り合いが多い。

 でも、そこに関しては、自分は踏み入れないほうがいいと思う。

 知りたいけど……

『けど、これであとは、本命の岡宮永輝……彼だけに集中すれば……渚?』

『あぁ! ごめん。 昴。クロユリの花束って用意できる?』

『クロユリ!』

昴が驚くのも当たり前だ。

だってクロユリの花ことばといえば、

※クロユリの花言葉は、愛、呪い、復讐、恋の魔術師、狂おしい恋、独創的、ときめき。なので、黒百合の花言葉は、相手への愛が深すぎるからこそ、いつの間にかその愛自体が呪いに転じてしまう。

「あぁ! それも、できれば今日中? それも2時間以内に?」

「!」

 今いる場所から、昴が働いているフラワーショップ「ホワイト」まで、どんなに急いででも20分は掛かる。

 それから、黒百合があるか店舗にあるか確認して、それを花束にして、再び戻ってくるのにどんなに頑張っても2時間は掛かる。

 それに、もしあったとしても…… 

 誰に渡すか教えて貰わないとこっちだって、例え、親友だろうと店の花を渡すことはできない。

「渚? クロユリの花束なんか誰に渡すだよ! それも、2時間以内に用意して欲しいって! お前まさか!」

 美緒さんを売った会社の奴らに渡そうとしているんじゃあ?

 文彦和彦を警察に売ったように、今度は、美緒さんの事を目先の金目当てで売った会社の奴らを……

 昴は、さっき渚が発した言葉を思い出し、黒百合を使って渚が復讐しようとしてると勘違いする。

 しかし、渚から返ってきたのは、そんな昴の答えを遥かに超える言葉だった。

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