第14話
_3日前_
「文彦和彦? 誰それ?」
渚から頼まれていた彼の同僚で、友人でもある草津千里の恋人で、二人の職場の上司でもある柿谷霧矢との不倫の証拠を掴むために、渚がセカンドハウス(美緒さん捜索用)に借りているマンションの屋上から彼の職場を見張りながら、本来の目的である岡宮永輝から美緒さんの略奪に向かっての次の計画(ターゲット)を渚に尋ねたら、文彦和彦の名前が挙がってきた。
「結婚詐欺師」
「はぁ? 結婚詐欺師?」
「そう? あぁでも、普段は、グラフィックデザイナーとして、父親で、同じくグラフィックデザイナーとして世界的に活躍している文彦陽樹……」
思わず声が裏返る。
「文彦陽樹! 文彦陽樹ってあの? 世界的ファッションブランド「オレゴン・侑依」のロゴをデザインしたあの? 文彦陽樹!」
「すすす昴!」
電話越しでも伝わってくる昴の興奮度に、渚は思わず言葉を失い掛ける。
「あぁ! ゴメン。俺、あのブランドの大ファンで、一度でいいから着てみたくて。けど、いまの俺の給料じゃあ、全然手が出なくて。でも、まさか、文彦和彦が、あの人の息子だなんて……」
そんな渚の戸惑いと文彦和彦が、そんな自分の憧れの人(ファン)の直系の関係だったことに昴は、大きなショックを受ける。
「……昴。悪いは、文彦和彦であって、俺の憧れる文彦陽樹じゃあない。それに、この文彦和彦は、人として絶対やっていけない罪を犯した」
「……罪? 結婚詐欺じゃあなくて?」
「美緒が、そんな男に騙されると思うか! 美緒は……」
インカム越しに聴こえてくる渚の罵倒。
「……ゴメン。じゃあ? この……文彦和彦は、美緒さんになにをしての?」
「美緒にじゃあない!」
「渚!」
「あいつは……文彦和彦は、美緒の……デザイナーとして夢?……いやぁ? それどころか、文彦和彦の金銭の援助と言う餌に負け、美緒をに売ったあいつらも絶対赦さない。昴。いま言う所に、この動画を匿名で送り付けろ!」
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