第13話
3日後 謝罪会見(テレビ中継)
「雫丘出版黒蝶編集部の市宮百花です! 文彦さん! 結婚している身でありながら、複数の女性と同時に交際し、結婚を申し込んでいたというのは本当ですか?」
「……はい。本当です」
市宮百花の質問に、衰弱している文彦和彦は、小さな声で「はい」返事を返す。
そんな文彦に、百花は更に、問いかける。
「文彦さん。貴方にとってはただの遊びだったのかもしれませんが、なにも知らずに、貴方と交際し、貴方からプロポーズを受けた女性(被害者)にとっては、大好きな人、つまり貴方と幸せの人生が待っていると思っていたんです。それを貴方は奪ったんです! その罪は、決して許されるものではありません! そして、貴方は、一番大事にしないといけない奥さん(蓬莱涼香)も裏切ったんですよ!」
嗚咽で声が、途切れ途切れになる百花。
しかし、文彦に伝えたい、いやぁ? 伝えなければいけない言葉を伝え続けた。
そんな百花の言葉に、文彦はただ、頷くことしかできなかった。
『それにしても可哀想なぐらい、彼? 叩かれているねぇ?』
テレビで中継されている、世界的デザイナー文彦和彦の緊急謝罪会見をカフェ「rose」で見ながら、昴は、少し離れた席に座る渚に向かって目でアイコンタクトを送りながら、インカムで謝罪会見を見た感想を告げる。
『そうだなぁ? けどまぁ? 自業自得だろ? それに、ここに集まっている報道連中は知らないだろう! 文彦和彦の裏の顔を』
昴の感想に、渚は、一切の感情のない声で返事を返す。
そう、この謝罪は偽り。
ここに集まっている人々は知らない。
文彦和彦の本当は、なにをしていたかを。
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