裏切り者には悪を味方には優しさを
第12話
『……あのさ? 俺を会話の出汁に、使うのやめてくれないかな? 俺、こう見えて、お前と違って普通の花屋なんだけど?』
左手で電話を掛けながら、右手には窓越しに映る草津千里を見る為に、双眼鏡が握られている。
昴が居るのは、先まで渚もいたマンションの屋上。
この場所は、渚が、美緒を捜す為だけに借りていたマンション(※自宅は、別の所にある)
そこに、住む所を捜していた昴が転がりこんできた。
今は、恋人兼婚約者である樋宮灯と同居している為、勿論、ここには住んでいないが、渚が彼に、裏の仕事を頼む時など、寝床として利用させている。
そして、渚自身も、本業である探偵の仕事が忙しく、自宅に帰らない時などは、自宅に帰らず、この家に寝泊まりしている。
昴は、渚に頼まれ、草津千里の恋人である茉莉川杏奈と草津の上司である柿谷霧矢との浮気現場の写真を撮り続けていた。
「ごめん! ごめん。けど、あぁ言った方が、説得力はあるだろう? それに……可哀想だろう? 自分の恋人が上司と不倫しているなんて、自分で直接見るならともかく、俺の口から訊きたくないだろう?」
電話口から、聴こえてくる渚の声は、いつもにまして残酷だった。
『……お前? 最低だなぁ?』
そう、口では言いながらも、昴は、内心どうでもいいと思っている。
渚の裏の仕事を手伝う……いやぁ? 手伝いさせられるようになってから今回みたいな状況を何度も見てきた。
そのせいか、こういう状況にも慣れてしまった。いや? 慣れてはいけないのだか。
それよりも……
「……そっか? 四六時中一緒にいるのに、彼女の不倫にすら気づかない、あいつもバカだと思うけど?」
渚の言動の方が気になる。
仮にも、草津千里は、渚? お前の同僚なんじゃあないかよ?
そう、渚に突っ込みたくなったが、彼に言ったところで無駄なので言わないけど。
『……で? 渚? 次のターゲットは?』
「あぁ……」
昴の質問に、渚は、次なるターゲットの名前を告げる
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