第10話

「あぁ! ゴメン! 草津。いまの話し、同姓同名の別の女性の話しだった。ワリィ」

 自分の問いかけで、明らかに動揺している草津に、渚は舌を出しながら、惚けた表情で謝る。

「いいよ! 別に? それより? お前って、相変わらず知り合い多いよなぁ?」

 これ以上、この話題をされるといつボロが出るか解らないので、草津は、折角のチャンスを無駄にしない為に、渚に別の話題を振る。

「……そっか? 普通だろう」

「いやいや! お前は、異常だから。泉石? まさかと思うけど……」

 危険な橋とか渡ってないよなぁ?

 例えば……裏社会とか?

「あぁ! 自分の探偵の仕事を手伝ってくれる花屋さんの親友ならいるけど?」

「花屋!」

 渚の口から飛び出したまさかの単語に、開いた口が塞がらない。

「そう? 花屋の親友。そいつ、職業柄、毎日色んな人と交流しているから、顔が広いんだよ。ん? どうしたか草津?」

「いやぁ? なんでもない」

「そっか? ならいいけど。じゃあ? コレ? お前に頼まれていた資料と写真が入ったUSB。それと、草津? お前もうすぐ誕生日だろう? ちょっと早いけど?」

 渚は、USBと綺麗に梱包されたギフトボックスを草津に手渡す。

「じゃあ? 俺、依頼人との約束があるから」

 そう一方的に草津に告げると、会議室から出て行く。

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