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12月11日。午前11時30分 探偵事務所「黒薔薇」休憩室。

「泉石先輩! 泉石渚先輩!」

(誰かが俺の事を呼んでる? 美緒? いや ?  美緒がこんな所にいるはずがない。だって美緒は……)

「先輩! 泉石先輩起きて下さい! もう」

 声の主は、起きない渚の背中に、近くに転がっていた中身のペットボトル(コーヒー)で思いっきり叩く。

「……いたたたぁぁあああ!」

「お疲れ様です! 泉石先輩」

「……茉莉川さん?」

 天使の笑顔で、何事もなかったかのように、ペットボトルを元の場所に戻しながら、渚に声を掛ける。

「先輩? 小休憩ならまだしも、こんな堂々と居眠りなんかしたら、柿谷課長に怒られますよ?」

 再び天使の笑顔に戻る。

 けれど、目元は、笑っていない。

「昨日、あんまり寝れなくて、僕になにか用事?」

「草津先輩が捜してましたよ?」

「草津が?」

 草津となんか約束してたっけ? 首を傾げる。

「はい。先輩と11時から会議室で、ミーティングの約束してたのに、先輩がいないって鬼の形相で叫んでましたよ?」

「あぁ!」

「もしかして、先輩? 草津先輩とのミーティング忘れてたんですか?」

「……はい」

「はぁ? 先輩! 自分でした約束ぐらい覚えてといてください!」

「すすみません」

「先輩? 私に謝れても困ります。じゃあ?  私、自分の仕事にりますから、泉石先輩も会議室に早く行ってくださいねぇ?」  

「解った!」

 ☆

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