第4話 シュンカの事情
「んで、シュンカちゃんだっけ? 何をどう助ければいいの?」
「はい。私は父に殺されてしまったようです。」
「はい? それはまた随分とヘビーなお話で。まさか、性的なアレがあったりとか?」
「せいてき? と言うのはよくわかりませんが、家督の相続に私が邪魔になったと言う事です。」
「ああ! あなたに相続権があるのに、別の子供に与えたくなったとか、そう言う感じ?」
「ええ。それでほぼ合っているのですが、父は継父でして、私とは血が繋がっていないのです。」
稀によくあると言う構図だった。シュンカちゃんの実父が伯爵様で、実母がその正妻なのだが、伯爵様は出先で事故死してしまった。それと同時に大きな借金があった事と、外に側室とその娘がいた事が発覚。
莫大な借金の返済に困った実母は、棒引きを条件に貸主の妾になる事を承諾。後日、逆に貸し主が伯爵家に婿入りすることになり、現在、暫定伯爵となっているらしい。側室とその娘も、その暫定伯爵が伯爵家に迎え入れたという事だった。
「ちょっと。それって全部仕組まれてたってやつじゃ無いの? 簒奪じゃない!
国に訴えるとかできないわけ? 貴族家の乗っ取りなんて重罪よねえ。」
「それが、全く取り合ってもらえなくて。」
「はあ。国が腐敗してるって事か。」
シュンカは俯いてしまった。
「で、シュンカちゃんとお母さんが死ねば、金貸しとその母娘が正式な伯爵一家になれると、そう言うわけね。」
「はい。今まで家を支えてくれた人たちは、猛反発しているのですが、それも力づくで一掃するために、盗賊団を領内に引き入れたみたいです。」
「アホにも程があるね。そんなことすれば、次はその金貸しが毟り取られる番じゃない。」
「そうなのですか?」
「悪事を働くって言うのは、弱みを作るって事なのよ。それを悪い奴に知られたら、当然、そこを狙われるでしょうね。
もっとも、盗賊団を抑え込めるくらいの武力を持っていたら話は違ってくるけど、そんな力があったら盗賊なんてやってる半端者の力なんか借りないでしょう?」
「しえる様はどこかの軍師か参謀をなさっていらっしゃったのですか?」
「この程度、ちょっと考えればわかる事だよ。ワトソン君。」
「わとそん???」
「あー、気にしないで。私の持病みたいなものだから。」
「わとそん病?」
「でさあ。シュンカちゃんは殺されちゃったんだよねえ。あたしとニコイチするにしても、あたしのスキルは超ビミョーじゃない?
どうやって助けるっての?」
「はあ。ようやく私が話せるのですね。神なのに。いいですよ。ふーんだ。」
うわっ、拗ねてた。神なのに。やっぱりめんどくせーよ。こいつ。美女だけにタチが悪い。
とか考えてたら、ギロッと睨まれましたとも。
「気を取り直して、シュンカさんには『外氣装甲』と言うスキルをあげちゃいます。」
「『がいきそうこう』とは、聞いたことのないスキルですねえ。」
「シュンカちゃんの世界には元々あるスキルなんですが、取得条件が厳しすぎて、獲得出来たのは3人だけと言う、神レアスキルなんですよお!」
シュンカは目を丸くする。
「世界で3人しか持っていないスキルを私にくださるというのですか!?」
すると女神は人差し指だけを立てると、
「チッチッチッ! 歴史上3人で全員死んじゃってるから、シュンカちゃんだけのスキルって事ですよ!」
「ええっ!!!
そのスキルを持ってると死んじゃうんですか? では、一緒に生き返るしえるさんはどうなるんですか!?」
「うわっ、そうだよ。あたしもすぐに死んじゃうの?」
女神は再び人差し指を降ると、
「チッチッチッ! みんな寿命で死んだんですよ。それだけ昔の人たちって事です。」
「じゃあ、死のリスクを背負うようなリスキーなスキルじゃ無いんだね?」
「むしろ『装甲』と言うぐらいですから、戦闘で死ぬ恐れは格段に少なくなります。」
「でも、微妙なのね。」
「はい。そこはインフレ対策でして、、、
ただ、しえるさんならば問題を解決できてしまうんです!! 無双なのです!!」
「はいはい。で、どんな欠点があるのかな?」
女神はふんすと鼻を慣らし、ささやかな胸を張ると、
「発動中は動けません。」
「なんだよ。アス○ロンじゃないか。微妙にも程があるぞ!」
「ア○トロン?」
「ああ。敵の攻撃を一定時間、完全に無効化する代わりに自分も何も出来なくなるのさ。
だよな! 女神様あ!!」
「いえ、違います。」
「はあ? 動けないのに攻撃手段はあったりするのか?」
「いいえ。相手の攻撃を無効化出来るわけでは無いのが違うと言っているのです。」
「おいおい。それって多少堅くはなるけど、袋叩きにされちゃうって事じゃない!!
そう言うのはビミョーじゃなくって、タヒにスキルって言うのよ!」
「まあ、普通に使えばそうなんですよね。実は、外氣装甲自体、習得出来た人はかなりいるんですが、使いこなせたのが3人なのですよ。」
「じゃあ、あたしらにどうしろってのさ。『超反応』があれば使いこなせるっての?」
「いいえ。それは無理です。」
はあ。頭痛くなって来た。
「でも、女神様は私達なら使いこなせるとお考えなのですよね!」
「さすが、拗らせたオタ女と違って、純真なシュンカちゃんは分かってますね!」
「拗らせてて悪かったわね。で、オタ女にも分かるように説明していただけるかしら。」
ふう。と女神はため息をつくと、やれやれとばかりに両腕を広げて見せると、ようやく核心部分の説明を始めたのだった。
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