第5話 ニコイチである意味

「『外氣装甲』を使いこなすには、深く心の通じ合ったパートナーが必要なのです。」


「それって、それがシュンカちゃんにとってのあたしって事?

 無理無理無理無理無駄無駄無駄無駄ァ!!!!

 生まれた時からゴリゴリのオタ環境で英才教育されたあたしに、こんな純粋培養のお嬢様の気持ちなんかわかるはずないじゃない!!」


「おたかんきょう?」


「ほら! あたしと、この娘じゃ、おけらとアメンボくらい違うのよ!!」


「おけらとアメンボは、なんとなく近い気がするのですが、あなたの世界の教えでしたね。違うように見えても、みんな同じく生き物であると言う。

 自分の顔を他人に食べさせて喜ぶという奇矯な英雄を生み出した者が説いたのでしたっけ。」


「や○せ先生の悪口は許さないよ!」


「悪口など言っておりません。私の信徒たちもそのくらいキャッチーな説法をすれば、信者も増え、私の力もみなぎろうというもの。」


「やっぱり、なんか小馬鹿にしてない?」


「してません。話が進まないので、それは置いておいて、本来は一心同体レベルに二人が心を合わせる事で、パートナーが外氣装甲を発動した者の体を操作するのです。」


「じゃあ、やっぱり無理じゃない!! その娘とは、育って来た環境が違うからスレ違いは否めないわよ。」


「話は最後まで聞きなさい。でも、パートナーを操作する方法は他にもあるのです。正確に動きをイメージできればなんでもいいのですよ。」


「ん? それって?」


「やっとわかって来ましたか? 『指矩えるさん!」


「!!!」


「『しえる』さんですよね? えるさんなのですか?」


 シュンカは小首を傾げて考えている。くそっ! 小狐よりも可愛いじゃ無いか!!

 しかし、私の黒歴史は全部握られているのか。このめんどくさ女神に。


「ええ。しえるさんは、とあるフィクション作品の登場人物と、本気で交際しようとなさいましてね、、、」


「いやいやいやいや、それ今関係ないですから。ええそうです。私が変なおばさんです。」


「へん?」


「その辺はおいおい説明致しますが、、」


「せんでいい! おいおいも、よいよいも、せんでいい!!」


「で、その想い人の名前が、自分の名前の中に入っている事を喜びまして、格闘ゲームのオンライン対戦のユーザー名にしてしまったのですよ。」


「おんらいんのげえむのですか?」


「でも、その作品は人気絶頂でしたので、そのまま『エル』と付けるとネタ元がモロバレになってしまうと考えたしえるさんは、L型の定規『指矩さしがねに目をつけましてね、、、」


「って、全部言わなくていいよ! 

おねがいじばずぅ。 もう、めんどぐざいとか言わないがらぁ!!」


 頭を抱えて、足をジタバタさせるしえる。


「しえるさんはえるさんと呼ばれるのが嫌なのですね。わかりました。私はしえるさんとお呼びします。」


 なんて良い娘。黒髪の天使。というか、どっかでこの感じ、見たことある娘だと思ってたんだけど、ナコ○ルじゃん! 赤い方の。紫の目付きのキツいのも捨て難いけど。


「まあ、いいでしょう。それにナ○ルルと言うのはいいですね。えるさんの持ちキャラでもありましたし、多分、最初からセレクト可能だと思いますよ!」


「なんですと? ○コルルを選択可能とか神ですか!?」


「はい。ようやくご理解頂けましたか?」


「いえ。今のは現代における、随分と扱いの軽くなった方の神でして、、、」


「ああっ! なるほど。 ちょっと自分の気に入る流れになっただけで『神展開』とか言うアレですね。」


「そうでございます。申し訳ないであります。」


 私が現代人を代表して本物の神に謝っといたぞ!!


「では、この特殊な兜をかぶって下さい。」


「ぷぷっ! かぶとをかぶって だって!!それって神様ギャグ!? おっさんのダジャレレベルなんですけどお。」


「さっきの謝罪はなんだったのでしょう?!」


 女神はぐぎぎと拳を握りしめているが、


「兜を被るのに、何が可笑しいのですか?」


 イノセントな瞳でキョトン顔を決める異世界赤ナコ。服はライトブルーのワンピースだけどさあ。


「そんなピュアな目で、穢れたあたしを見ないでおくれよぅ。

 大自然におしおきされたいですぅ。」


 あたしの妖気が膨れ上がるのを感じ取ったのか、シュンカは女神の後ろに隠れてしまう。


「ちょっとお! 一心同体まではいらないけど、息ぐらいは合わせないといけないのですよ!? シュンカちゃん、完全にキモがってるじゃないですか!!」


 がーん!! キモい私。穢れた私。もう、生き返りたくありません。


「はいはい。自虐キャラなんか流行りませんよ。さっさとかぶった、かぶった!!」


 華麗にスルーされつつ、渡されたヘルメットを被る。って言うかこれHMDでしょう?」


「見えましたか? それがシュンカちゃんの視界です。」


「いいえ。真っ暗ですが、、、やっぱりキモい人と視覚を共有なんて、そりゃ嫌ですよねえ。」


「そ、そ、そんな事は、、、」


 こんな天使に言い淀まれちゃったよ。


「ごめん。ごっめーん! 触媒が無いのにあんた達が繋がるわけないよね!」


 このアマァ。絶対ぶん殴ってやる!! つか、敬語キャラも、もう忘れてないかい?


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