欲バレ! 弥太朗!

おつじま

第1話ええっ!? なんでですか〜?

ボクの名前は『郡司掛弥太朗(ぐんじかけやたろう)』。

今年で39歳になる独身男性だ。


この歳になるまで男女の関係もなく生活も色々な仕事を転々としている。貯金なんてあるはずもない。


あの日、家から2ブロック(英語圏かぶれたいのか)くらい? 200mあるかないかぐらいのコンビニに煙草をふかしながら(良い子は真似すんな)向かう道中の事だった。


日課のネットラジオを耳に打ち込みながら歩道を歩いていた。そんなに高品質ではないものノイズキャンセリングのご機嫌なBluetoothイヤホンなのでもう世界には没頭なのだ。


後ろから迫る大きな鉄の塊のことなんか気になるはずもなく(それに一方通行だし)。


それが縁石に跳ね上げられてボクの方に飛んでくるのは間もなく、想像に欠けるものだった。


ボクはそれを振り返る暇もなく、背中からの激しい衝撃を覚えたのと同時に、歩く道すがらに立ち並ぶマンションだったかテナントだったかの壁へと押し流された。


それはあまりも一瞬過ぎて、『何が起こったのか?』とか考える暇さえくれなかった。刹那。


ボクの視界は白とも黒とも感じぬ世界へ。


事が起こって数秒、ようやくボクの頭も働きはじめた。

まず、何が起こったのかを。


とりあえず、今まで行っていたことを振り返る。

『コンビニに向かって歩いていて…、急に身体が吹き飛ばされて…』

まだ、困惑が抜けきれずまとめるにもまとめられない弥太朗。


そんなとき……『…ろう…。…ろう。たろう…。よーたろう。』

だれかが呼ぶ声が聞こえた。声の感じから女性であることは分かるが親しみのある母の声とは違う。

知らない女性の声だ。


その声に耳を傾ける。もっと声主の解像度があがる。

女性ではあるがボクの年齢よりは遥かに幼い10代くらいの若々しい女性の声だった。


『いや、待てよ。今どき、10代の人間を演じる声優とかいるんだし、声質だけで年齢を決めつけるのはどうなのか?』

弥太朗はマンガのキャラクターのようにブンブンと顔を振り回し、声の方向に目を向ける。


目を瞑っていたせいかはじめはぼやけていた視界も徐々に鮮明になっていった。

弥太朗がいるこの場所は少し薄暗く、周りは奥行きがとても広く感じられるが多くはモヤのような霧に包まれおり、どこまで歩けるのか? 端はあるのか?分からないくらいの広さがある事が分かる。


弥太朗が声がする方に目を向けてしばしばしているとモヤの先からうっすらと人の形をしたなにかが近づいてくるのが分かる。


誰だ? いやそもそも、ここはなんだ?という気持ちもあったがそれよりは誰が来るんだという興味と関心の方に頭がいっぱいで近づいてくるそれに釘付けになる弥太朗。


近づいてくるにつれそれが人の形をしているが人とは異なる姿をしている事に気づいた。


まず大きく異なる部分は頭の上。その近づく何かには黄色…というよりは黄金色というんだろうか。LEDの電飾よりもまばゆい光を放つ金の延べ棒に近い色の円状の何かを浮かべており創作物でもよくある天使とか神とかの種類のモノを想像する。弥太朗の経験論だ。


また、顔立ちもしっかりとしてきてよく見るとあれだけ否定してきた年齢論を瓦解するほどの幼さ。人間で言うと10歳になるか、ならないかほど幼い顔立ちと体つき、伸長も所謂、『子ども』と言わざるを得ない大きさ。

身体は体格に似合わずと言うか、それに合わせて体つきを隠すかのような子どもにはサイズ違いの3Lぐらいのダボダボな白いTシャツを着ている。

そして、これは人ならざると決定を受けるようなモノで

ダボダボのTシャツのと似つかわしくない大きな翼が背中と思われる部分から生えてると思われる。こちらからは生え際なんか見えず、たぶん背中だろうという想像だけをする。


その得体のしれない『小さき者』は床と思われるモヤの濃い塊の絨毯のような所を少し浮いたような感じで滑ってこちらに向かってくるのだ。


『弥太朗。』

その近づくモノは可愛らしい声でボクの名前を呼ぶ。


『キミは、不遇にも、アタシが管理する地域で命を落とした。』


『はい?』


『よー、するにキミは死んだんだよ♡』


ボクの頭は一瞬、思考停止した。

確かに思い当たる要因は色々とあるが、実際面と向かって『死亡通知』を受けるとどんな人間のフリーズする。

それにココの情報過多も相まって考える事にも至らない。


それは口を開いた。

『アタシはミミン♪ この地域を管理する神様デース♡』

にぱーっと全開で笑顔する(自称)神は弥太朗の脳裏にも『なんかそういうアニメとかマンガのキャラクターいたなあ』と思い出させ少し冷静さが戻る。


『ええッと……ミミン? ボクはなぜここにいるんだい?』

情報収集含めて落ち着きを取り戻そうとミミンに質問する弥太朗。


『えへん、キミはあるている途中に車に轢かれて死んだんだよ〜。そして、死んだ後にアタシが魂を呼び寄せてここにいるんだ。』


なんだって…なんかよく聞くライトノベルの主人公展開になっているのかボク。そしてトラックに跳ねられてって展開! 何100回見たよ! それ!? 擦られ過ぎじゃない!?

そんなことをモヤモヤと考えているとリリンは


『でもね。キミの死は予定してなかったんだよね。あの日は本当は別の人にトラックが突っ込む予定だったの。つまり、キミは……無駄死?』


なんていう言葉をはき出すんだこの少女は!? 酷くないか?と内心ではコレがトラック運転手という訳ではないのに殺された憎悪に近い感情を呼び起こされつつもハッと我に返り『違う違う違う』と気持ちを整える弥太朗。

弥太朗が気持ちを右往左往させている間にソレは続けて


『そ·こ·で·だッ。弥太朗。 不本意に死んだ弥太朗に朗報だよ。じゃじゃ~ん♡ 弥太朗。キミにはアタシ直々にギフトを与えたいと思いまーす。』


弥太朗は『!?』はな気分になった。死亡通知されて神に呼びされたあとにギフトを当てられる展開。所謂、チートのお決まりだ。というかその前にギフトを与えられた後の処遇をまず訊ねてなかった。定番は剣と魔法の異世界。もしかしてその前の準備段階ではないのかと悟った弥太朗は

『ボクは……この後どうなるんですか?』

尋ねられずにはいられない。


ミミンは間を開けずに

『キミには……これからアタシが管轄する星に転生して貰い魔王を倒して貰いまーす♡』


きたああああ!! 異世界転生!! それもチート持ち!!

今後の生活安定の主人公だああ!!と一瞬は喜びつつも

次第に冷静になっていく弥太朗。

ギフトっていくつ貰えるんだ? そしてどこまでそれが適応されるんだ?と。

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