第2話 転生

ノックの音が聞こえ、「開けるよ。」と声がした。

「どうぞ。」

そういうとガチャリと音がしてファリンさんが入ってきた。

「ん、よかったよ。服がぴったりで。」

鏡の前で服に着替えた俺を見て、そう言った。

「ありがとうございます。何から何まで。」

「いや、こちらこそだよ。こっちの都合で君を呼び出してしまったからね。その結果君の命を危険にさらすわけだし。本当にすまない。」

そう言ってファリンさんが頭を下げる。

「顔を上げてください陛下!僕は大丈夫ですので。」

そう、この方はこの国、いや、この世界の王なのだ。




―――――時を遡りイエスタデイ。

ドッカアァンッッ!!

という爆音と爆発の中から女神様の力により俺が出てきた。

「ゴホッゴホッ!ぶほっ!煙たっ!!」

煙で何見えない。しかし外からは、色々な声が飛び交っているのがわかる。

煙が晴れ、周囲がの様子が見えてくると、自分の状態も理解する事ができた。

広く、豪華な部屋に何人もの人間が横に散らばっている。それぞれ、

「やった!成功だ!」

「各州に伝えろ!」

「信用できるのか?」

などと声を上げている。

そして、正面には頭の上には王冠を乗せ、豪華な服装で身を包み、厳格のある面持ちをした男性がいる。どういう人かを理解したあと、すぐさま跪き、頭を下げる。頬から冷や汗がしたたり落ちる。

(……あの女神様転生と召喚を間違えたな?)

ここは間違いなく王室だ。あと目の前の王様はヤバイ。顔が怖い一歩間違えたら殺される。動悸が止まらない。

すると王様が口を開いた。

「どうか立ってください。」

え…?

言われたとおりに頭を上げる。すると王様が

「こちらの事情ながら勝手に呼んでしまったことを深くお詫びします。」

と言って、王様が、深く頭を下げる。俺は驚いた。まさか謝るとは思わなかった。一国の王としてはしてはならないことなのだろう。家臣たちは取り乱していた。が、彼にとっては関係ないのだろう。

(……まあ、そりゃそうか。)

自分たちの利益のために他人の人生を狂わせるみたいなものだ。謝るのは当然のことだ。その当然をどれくらいの人ができるだろうか。少なくとも、前の人生では出会うことができなかっただろう。

(この人は王依然に人として俺に謝っているんだ。プライドや周りからの目を気にせずに。)

相手が納得するように言葉を選ぶ。

「頭を上げてください。あなたがいい人でよかった。僕は今まで散々な生活をしていたので救い出してくれてありがとうございます。」

すると、王様さまは納得してくれたようで、ほっと胸を撫で下ろしているのが見てわかった。

「して、勇者よ。貴殿にこの世界を救ってもらいたいのだが。」

ん?

「すいませんが、もう一度おっしゃってもらえると……」

「貴殿にこの世界を救ってもらいたいと言ったのだ。」

いやいやいや

「いやいやいや、僕にそんな世界を救えるような力はありませんよ。」

「いや、あるはずだ。わしの目にはそう見えている。」

そう言って、またもや王様は頭を下げる。

「このとおりだ。頼む……!!」

「……頭を上げてください。」

俺は勇者になる覚悟をした。

「この世界を…救ってくれるか?」

王様が希望に満ち溢れた目になる。

「はい。」

この世界についてまだ何もわからないし、そもそも救う覚悟もない。だけど……

この人になら俺は命を捧げられる。

そんな気がした。



第2話 転生 完

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メメントモリ 灰都 @shoutaaaaaa

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