第16話 理由はわからなくても

第16話 理由はわからなくても


 雷の塊が発射されようとしていた。その時……

「僕ちん!! 参上!!」


「ボルカニック・ウィンド・アーマー」を身にまとったリリスが雷雲の雲の壁を突っ切って雷と勝の間に入った!!


「だめだ!! リリス!!」

勝が叫んでも目の前を退くことなく雷に対峙している。


「頼む! どいてくれ! 俺のことはいいから!!」

「だめだよ、勝ちん。僕ちんが勝ちんとついでにフェンちんを守るから……!!」


 雷の塊は邪魔なリリスのボルカニック・ウィンド・アーマーに衝突しだした。

「ぐぬぬぬ、これくらいなら……余裕……だから……フェンちゃん、今のうちに逃げて!!」

 

「でも、お主は……リリスはどうするのじゃ!!」

「それはね……こうするのさ!!」


 リリスは最後の力を振り絞って、雷の塊に突撃し、方向を逸らした!

だが、ピンク色のきれいな鱗は黒焦げになって空から落ちていく……

「リリス!! くそったれ、こうなったら!!」


 俺はフェンの背から飛び降りて、落ちていくリリスを追いかける! なぜだかそうしないといけない気がしたんだ!!


「勝!! くそっ、妾も行くぞ!」


 2頭と一人は雷雲地帯を抜けて落下していく。途中まで目をつぶっていたリリスが薄目を開けて一緒に落ちている俺を見る。


 「勝ちん……? 何をやってるの……」

 「助けに来たんだ!」

 「なんで……?」


 「お前は俺とフェンをレースの初めに助けてくれた! 共闘もした! 助けに行く理由なんてそれで十分だ」

 「……」


 リリスは顔を赤くして、落下しながらそっぽを向く。

 「でも、勝ちんも落ちてるよ。これから僕ちんをどう助けてくれるのかな」

 「そ、それはだなあ。うーん、ええと、その……何とかならあ!!」


 俺たちは雲の中を突き抜け、最初の空島のレース地点の高さくらいまで落ちていた。


 「へへへ、勝ちんは意外と考えなしなんだね」

 「悪かったなあ」


 「勝ちんは僕のことが好きなんだね」

 「それは……そうかも」

 「フェンちんと僕ちん、どっちが好き?」

 「どっちも好きだ!」

 「わお! 最低な男だよ……でも僕ちんも勝ちんが好きなんだ。フェンちんも好きだよ、友人としてはね」

 

 リリスはだから……と続ける。

 「このレースを通じて勝ちんとフェンちんとは仲良くなったし、ほかのみんなとも共闘できた。このレース展開を作ったのは勝ちんとフェンちんだよ。だからさ本当に感謝してるんだ。よかったらさ……」



 リリスが何か言いかけたところで、呆れた声がする。

 「妾が必死に助けに向かったのに、勝とリリスは何を呑気に話してるのじゃ! お主らは空を真っ逆さまに落ちているのだぞ?」


 フェンが助けに来てくれたらしい。落ちている俺の体を風魔法でくるんで自分の体に乗せてくれた。リリスには浮かぶための簡単な風魔法をかけたらしい。

 

 「フェン、アリガトさん」

 「全く!! いきなり妾の背から落ちてリリスを追いかけるなど自死したいのかと思ったほどじゃぞ! 助けに来てみたらなにやらいい感じで話して居るし……嫉妬で苦しいのじゃ」


 最後の言葉はよく聞こえなかったが、考えなしに動いて心配をかけたのは事実だ。

 ごめん、と謝るとこのような行為はしないようにと厳命された。


 フェンはリリスに助けに来てくれてありがとうなのじゃ、と悔しそうに言っていた。妾のせいで勝が死んでしまう所だったと首を垂れていた。


 「ふふん、一つ貸しだね」

 「むう」


 「ちなみに勝ちんにフェンちん、気づかなかったとはいえ雷雲の核に入るのは自殺行為だからね」


 「お、おう。知らなかった」

 「妾も同様じゃ、面目ない」


 リリスが空中にとどまりながら、遠い目をする。

 「僕ちんたち、レース負けちゃったね。今頃みんな4つ目の輪を通り抜けてる頃さ」

 「そうじゃの。悔やまれるのう」


 俺はそれを聞いてにやりと笑う。

 「いや、まだ勝つチャンスはあるぞ」

 「「何だって?」


 そしてこれからやることは賭けに近いし、かなり危ないことだが……と言いながらも2頭にある考えを伝える。


 「は~~?? 何を言っておるのじゃ! そんな危ないことは認められん!」

 「そうだよ、勝ちん。危険だよ!」

 

 2頭は必死に説得してきたが、俺は頑として折れず、結局この考えに付き合ってくれることになった。さあ、リベンジと行こうか!!


























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