第15話 最後の関門 雷雨地帯

 6頭と1人はその場に待機してお互いを見つめる。

 「ここからは恨みっこなしだぞ! 一斉に飛び出して勝負だ!」

 オーリスが皆を代表して言う。共に戦ったライバルたちと一斉に勝負できるのは嬉しいぜ。

 

 「おう! もちろんだ!」

 「妾たちが一番をもらうのじゃ!」 

 俺とフェンが勢いよく言うと、ほかの面々も騒ぎ始める。


 「貴様らは友だと思っているが、このレースだけは負けん!」

 「……負けない」

 「俺っちが最後に一等賞だぜ!」

 「僕ちんが勝つもんね!」

 

 「準備はできたようだ! 行くぞ! 3、2、1!」

 「「「「「「スタート!!」」」」」」


 5頭がお互いを抜かせまいと攻防を繰り広げる!!


 ブレイズが炎の壁を出して邪魔をしながら、自分は涼しげな顔でその炎の中を進む!

 シエロが水流を纏いながら、炎の壁を消火して雲を生み出して妨害をする!

 リリスが立ちはだかる雲を風で押し流しながら、竜巻を生み出す!

 ノクスが突如闇を生み出して、竜巻を吸収して黒雲を生み出した。

 オーリスが黒雲を打ち破ろうと光魔法、ライトニングボルトを打ち響かせる!


 その攻防のせいで、何もなかった空の一角に大きな雷雨が響く地帯ができた!


 「全く! はた迷惑なやつらだ! 人間の身の俺を心配するとかないのか!?」

 「勝! サブスキルの空気の膜を強化しておいたぞ! 人間の身では雷に打たれて死んでしまうからの!」


 『何もないはずのコースに大きな黒雲ができたのう!! これはレース展開に大きな影響を与えるぞ!!』


 どうやら最後の輪に到達するにはこの雷雨地帯を抜けるしかなさそうだ。ショートカットを探している余裕はない。


 俺とフェンはざあざあと雨が降る雷雨地帯に突入した!


 「くそったれ、先が何も見えねえ!」

 「むう、これは方向感覚が狂うの!!」


 空気の膜は雨が目に入るのを防いでくれるが、視界は雨と雷の光が飛び交っていた。

 ひゅうひゅうと風が鳴る中、ガクンとフェンの「ウィンドクラフト」が持っていかれる!

 どうやら乱気流に引っかかったようだ!


 「勝! すまぬ。乱気流に引っかかったようだ!」

 「うう……あぶねえ、落ちるところだった」


 「それにしても、この雷雨の中は魔法の発動が不安定になるようじゃ」

 「そうだな。ウィンドクラフトの緑色が薄くなっているように見える」


 「ウィンドクラフト」の緑色の光が不規則に瞬きながら薄くなっているように見える。

 俺は歯ぎしりしながら、飛ばされないようにフェンにしがみつき、何かないかと考える。


 だが何も思いつかず、この雷雨地帯を抜けれることを祈るしかなかった。


 ほどなくして、雲の中の雷雲の核と呼べるものの中に突っ込んで行っているとは知る由もせず……


 ――リリス視点――


 「困ったね、この雷雨の中だと何も見えないよ」

 びゅうびゅうと風が吹き、雷の光が頼りの雲の中では強敵≪とも≫たちがどのように進んでいるか知る由もなかった。


 リリスは特に勝のことが心配だった。人間の身で雷雲の核の雷を食らったらひとたまりもない。レース中とはいえ、勝の心配ばかりして周りの気配を探っていた。


 「うーん、気配がつかめない……いや魔力反応に切り替えたらどうかな?」

 魔力反応を探ると勝とフェンの魔力反応がリリスより少し先を飛んでいることに気づいた。


 「あの方向は……まずいよ!! 雷雲の核の方じゃん!!」


 リリスはレースの最後に使おうと思っていたとっておきの風魔法を使う!

「上級風魔法!! ボルカニック・ウィンド・アーマー!!」


 急いで向かわないと勝が危ない!! その思いで多少の雷はそのまま食らいながら猛る烈風をその身にまとい突き進む!


 「僕ちん、なんでこの前出会った人に固執してるんだろうね……?」

 そんなとりとめのないことを言いながらも、雷雲の核の方を目掛け突き進むのであった。



 ――勝視点――


 何か危ない気がする。ギャンブラーの勘が告げていた。

 「フェン、何かこの先は危ない気がする。進路を変更できないか?」

 「勝がそういうのならば……ん? まずいぞ! 妾たちは引き寄せられている! この先は大きな雷の反応がするのじゃ!!」


 そう。もう雷雲の核の中に突っ込んでいて、身動きが取れなかったのだ。

二人が焦っているうちに、雷雲の核の雲にたどり着いてしまった。

ピカピカと大きな雷の核が不規則に光っていた。その光の先は心なしか勝の方に向いている気がする。


 ビリビリと音を立てて、雷の塊が大きくなっていく。

「フェン、防御魔法を頼む!!」

「ありったけの魔力をつぎ込むのじゃ!! 上級無属性魔法『プロテクト・アーマー』!!」


 俺の体に無属性の魔法が張られる。それでも雷の塊は大きくなり続け、巨大な太陽のような形になっていく。


「フェン、どうにか逃げられないか⁉」

「あの雷に引き寄せられているのじゃ!! 意味が分からん!!」

「なんとか、ならないか……いや『ウィンドクラフト』に魔力を大量に込めろ!!」



 それは勝の脳内に唐突に降り立った発想だった。それがアルスの魂の欠片を持っていたせいか、ギャンブラーとしての勘かはわからない。


 「なるほどのう!! やってみるのじゃ!!」

 

 だが無常理にも雷の塊は溜まり切ってしまった。『ウィンドクラフト』に魔力を充填しようにも、『プロテクトアーマー』と同時並行ではなかなか進まないようだった。


 「まずいのじゃ!! あの雷が当たったら勝は死んでしまう!」

 「っ!! もういい、『プロテクトアーマー』を切って『ウィンドクラフト』に魔力を集中しろ!!」

 「勝が死んでしまうのじゃ!! 妾はもう……大切なものを失いたくないのじゃ!!」

 「いいからやれ、フェン!! ここで迷ったら――俺たち、賭けに負けるんだよ!!」


 雷の塊は巨大な太陽のように輝き、今にも爆発しそうなほど膨れ上がっている。周囲の空気が焼けるように熱く、肌がチリチリと焼ける感覚が走った。


 雷の核は天を裂くような轟音と共に、巨大な光を放つ。


 「うおおおおおおおおお!!」


  フェンの風が渦を巻き、俺たちの視界は閃光に染まった――。


 その先に待つのは――希望か、それとも破滅か。































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