第9話 ピンクのあの子は女の子?

 俺とフェンは遺跡の中の居住区に案内された。どうやらレースが一日後なのは俺たちの疲労を考えてのことらしい。


 居住区には風の民が100人以上住んでいるらしい。どこに行ったのかわからなくなったとは聞いたがこんなところにいたとはな。


 「わ、妾と一緒に寝るか?」

 「お、おう。それもいいな」


 俺とフェンは一緒に寝ることにした。でかいベッドに案内してフォッフォッフォと笑っているハルにしっしっと追っ払って俺たちはベッドに横になる。

  

 フェンの瑠璃色の眼が期待を込めて俺のことをじっと見ているので、俺は口を開く。

 「フェン、その……悪いが今日はしねえぞ? 明日のレースに響くからな」

 「ふむ、そうかの」

 「明日のレース、勝つぞ。俺たちの絆に賭けてな!!」

 「当たり前なのじゃ!!

 フェンが嫌に聞き分けがいいなと思ったが俺は疲れていたのですぐに寝てしまった。


 「勝が我慢できればのう……フフフ」

 フェンの意味深な一言を聞き逃してしまった。


 俺は体が火照った感じがして、目を覚ます……

 するとフェンの豊満な胸がゆっさとゆっさと揺れながらその体と俺がつながっていることに気づく。


 ま、まずい。これ以上は……


 ――自己規制――


 その次の朝、と言っても空島は朝や夜はないらしく、ずっと太陽が輝いているらしいが、俺たちにとっては朝、目が覚めた。


 隣にはつやつやとした色気のあるフェンが寝そべりながらこっちを見ていた。尻尾をブンブンと振っているので嬉しいのだろう。俺はげっそりとしながらこう言う。


 「フェン、ちょっとは加減しろ……」

 「すまんすまん、ただ勝の愛は受け取ったぞ」

 「俺の愛を搾り取っていたのはお前だろ……」

 「フフフ……」


 ぺろりと舌で唇を舐めて妖艶な雰囲気を出すフェンは一体どうしてしまったんだ。

 「なあ、お前サキュバスとかに乗っ取られてないよな?」

 「そんなわけなかろう。妾は元々こういう性格じゃ」


 アルスもよく半泣きになっていたぞ、というフェンにそういう所で何かやらかしたんじゃないかと言おうと思ったがやめておいた。本当に当たっていたらフェンが落ち込みそうだったからだ。


 そろそろ起きだそうとしたところに部屋の入り口からノックの音が聞こえ、返事をする前にいきなり扉ががばっと開く。


 「はーっはっは!! 僕ちん参上!!」

 ピンク色の髪をポニーテールにまとめた活発そうな雰囲気の女だ。目は淡い水色で小顔で可愛い系の顔だった。。ちなみにフェンはロングヘアーでサラサラの髪だ。お風呂とか入ってないのにあれだけサラサラなのは不思議だな。


 ピンク髪の女は、部屋に入った瞬間、脱ぎ散らかした服と何も着ていない俺たちを見て顔を赤くして……

 「へ、変態~~!!」 

 と叫びながら出て行ってしまった。

 

 「勝のせいじゃの」

 「フェンのせいだろ!!」

 俺とフェンは口喧嘩をしながら服を着て外に向かう。裸のフェンもよかったがやっぱり精神衛生上服をきてくれた方がありがたい。


 外に出ると……恥ずかしそうにもじもじしている先ほどの女がいた。

 「ぼ、僕ちん、参上……」

 「なんでそんなに恥ずかしそうなんだよ」

 「い、いや君らのせいだよ⁉ まさか部屋に入ったら、そ、そのした後だと思わないじゃん」

 「返事も聞かずに部屋に入ってくる方が悪いのじゃ」

  

 ぷくーっと頬を膨らませて怒っている女は何だかかわいく思えた。

 「お前、なかなかかわいいところあるんだな、名前は?」

 「か、かわいいって……でも朝までしてるやつに言われたくない!」

  

 隣から見覚えのある絶対零度の視線が突き刺さっているが無視して話を聞いてみると名前はリリスというらしい。


 「それでリリスは何しに来たんだ?」

 「あー人の話を聞かないタイプだね。サイテーー」

 「勝は自分勝手な男なのじゃ。だからリリスにはやらんぞ」

 「そういわれると欲しくなっちゃうなーー」


 女同士で火花を散らして喧嘩を始めそうだったので両方の頭に突っ込みを入れて話を聞くとレースの練習を一緒にしようとのことだった。


 レース会場に着くまでに少し話をする。

 「なんで僕ちんって言うんだ?」

 「うーん、うちの所は兄弟が多くて、女が僕ちんしかいないからこんな感じになっちゃった」

 テヘペロっと舌を出して笑うリリスはちょっと小悪魔的な魅力があった。


 「ねえ、このレースで僕ちんが君らのとこより順位が上だったら、僕ちんとデートしてよ!」

 「何を言い出すか! そんなことはありえんのじゃ! それにリリスと勝のデートなど絶対やらせんのじゃ!!」


 「え~どう見てもフェンは勝てないよ。僕ちんは風をつかむのが得意だから~」


 こんな喧嘩をしながらもレース会場に到着した。


 フェンとリリスはにらみ合っているが、俺がフェンを呼ぶとこっちに来た。なぜかリリスもついてきているが……


 「フェン、お前はどうやって飛ぶつもりなんだ?」

 「それなら問題ないぞ。上級風魔法『エアウォーク』」

 フェンが叫ぶと、足元に風の足場が現れる。まるで見えない橋が空に浮かび、その上を軽やかに駆け出す。


 「すげえな……本当に飛んでやがる!」

 「当たり前じゃ! 妾には魔の才能があるからの!」


 一方で、リリスは背中の小さな翼を広げ、軽やかに宙を舞っていた。

 「ほらほら、そんな遅いんじゃレースで勝てないよ! 勝とのデートは僕ちんのものだね!」

 「うるさい! 妾が本気を出せばすぐに抜くわ! リリスにはデートはさせんのじゃ」


 「ったく~まだ僕は龍の姿に戻ってなくてこれ何だからね」

 フェンがエアウォークで足場を作りながら対抗していると急に風向きが変わり、足場の風の向きも変わる。


 「フェン、危ない!!」

 足場も何もない空中に飛び出すフェンだったが間一髪で足場を作り直し事なきを得る。

 「ったく、こんな風に翻弄されてたらレースどころじゃないよ? やっぱりデートは僕のものだね。何なら勝ももらっちゃおうかな~」

 「ぐぬぬぬぬぬうう」


  2人が競い合う姿に、俺は少し安心すると同時に焦りを感じる。やっぱりこのレース、簡単には勝たせてもらえそうにない――。」

  風の対処も考えないといけなさそうだ。これは厳しいレースになるな……

































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