第2話 特大級のが出現

「もぉ〜、いい加減にして欲しいわ!」


 河原で目を覚ました時、辺りを見回して、美琴は状況をすぐに理解し、前世の記憶とミコの記憶を合わせ持ったまま、この異世界のナロシカ国アタゴラ村でミコとして生きる決意を固めた。



 頼まれていた買い物を済ませて居酒屋に帰ると、マリアが鬼の形相ぎょうそうで待っていた。

「どこをほっつき歩いてたの!」


「ごめんなさい」

(死ねっ、クソばばあ)


 買い物かごを渡して、ミコはすぐに厨房ちゅうぼうに入り、いつものように仕事をこなした。




 ある日、マリアがケンを連れて里帰りした。実家の母親の具合が悪くなったからだ。実家は隣町で、馬車で五時間ほどかかるところだ。


「ゆっくりしてこいよ。お義母さんが酷くないといいな。店は、俺とミコでなんとかなる」

 優しい言葉をかけるジョンだったが、彼には妻に隠している思惑おもわくがあった。


 その夜、ミコが自室の屋根裏部屋の粗末なベッドで寝ていると、いきなりドアが開きジョンが入って来た。


「何ですか!」

 ミコは、咄嗟とっさに起き上がった。


「なぁ、分かってるだろ? やらせろよ」

 ジョンは、ミコの肩に手をやり、ベッドに押し倒した。

(やめろ、このクソエロおやじ!)


 膝下まである、長い寝巻きの裾が捲り上げられ、太腿があらわにされた。


「やめてください! やめて! やめろ、この野郎! 」

 抵抗するミコの両腕は、ジョンの大きな手によって押さえつけられた。


「誰か、誰か助けて!」


 さすがに大人の男の腕力にはかなわず、押さえつけられて諦めかけたその時、屋根の明かり取り窓を突き破って、何かが飛び込んで来た。


 コウモリだった。

 しかも、狭い屋根裏部屋では翼を広げられないほどの特大級の。

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