【鑑定その8 布でできた魚の兄弟 前編】
「ねえねえ、見てこれ、こないだ見つけたー!」
ルブラは布の筒のようなものをかぶって現れた。
見るとその布には目あって、鱗やひれも描かれていた。つまり魚の絵の描かれた布なのだ。
「小さいのもあるんだよ」
そう言うとルブラは小さい布の魚を取り出した。魚の絵の描かれた袋は大中小の三つあり、あと、よくわからないキレイな色の飾りのようなものもあった。
「なんに使うんだろうね、これ」
「うーん」
わたしはその【布の魚】を調べてみた。絵はさしてリアルではない。そして着るものでもなさそうだ。着るにしては小さいものはあまりに小さすぎる。魚の口のところには紐のようなものがついている。
そうこう考えているうちに、ルブラは布の魚を持って振り回し、遊び始めた。振ると魚は空気を含んでふくらみ、宙を泳ぐように動く。
「それだ!」
わたしは思いついた。これは多分棒の先に結び付けるのだろう。
案の定、棒に魚をつけて振ってみると、魚はいい感じに空気の中を泳ぐように動く。
「うーん。たしかにそれっぽい」
「でしょう?」
「でも使い方が分かっても、けっきょくこれが何のためのものか分からないじゃん」
「ルブラ……これはね。ルアーよ」
「ルアー?」
「疑似餌のこと。釣り人が魚の食べる虫をまねたものを作って魚をとるのを見たことない?」
「あ、知ってるかも」
ルブラは棒の先についた大きな布の魚をながめ、首をかしげる。
「つまり、これでもっと大きい魚を釣るってこと?」
「惜しい」
わたしは首を振る。
「この謎の魚は、明らかに空中を泳がせるようにできている……つまり、狙いの獲物は空中にいるってこと」
「ああ! あいつかあ!」
ルブラは理解し、目を輝かせる。
「巨大怪鳥だな! それをこいつでおびき寄せるんだ!」
「それそれ!」
今回の鑑定品メモ:
【布の魚の兄弟】
いちばん大きい魚は青く、二番目は赤い。今回はわたしの鑑定眼がいかんなく発揮され、スムーズに正解にたどりついた。道具というのはかならず目的があり、それに合った形に作られるものなのだ。それを推理すれば自然に正解にたどりつくものなのだ。
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