【鑑定その8 布でできた魚の兄弟 後編】
怪鳥、それは多くの冒険者を苦戦させる相手である。
なにしろ飛んでいる。
最近ダンジョンに現れるようになった怪鳥ロプロプは、冒険者たちの悩みの種だった。彼らはなわばりに入った者を執拗に攻撃したり、冒険者の食料を奪って苦しめる。
しかし敵は空中だ。飛び回っている相手に弓矢もそうそう当たるものではない。そんなわけで、多くの冒険者たちはロプロプのなわばりに入ると、そこを懸命に駆け抜けるか、不利を承知で戦いを挑むかを選ばねばならなかった。
それはルブラほどの腕利きの冒険者でも同じだった。もっともルブラぐらいになると怪鳥に石をぶん投げて当てたり、狙って滑空してくる敵をタイミングを合わせて撃墜したりできるのだが、手こずることには変わりはない。
そこに登場したのが、このたび見つかった【布の魚の兄弟】である。ルブラはそれをもって怪鳥のなわばりに行くと、早速、長い槍にそれをくくりつけた。
それを振り回すと、布でできた魚が空中をひらひらと舞う。怪鳥はそれに引きつけられた。何か得体の知れない生物がなわばりにやってきたと思ったのだ。
怪鳥ロプロプはその魚を狩ろうと滑空する。それはたやすい獲物のはずだった。しかし、かぎ爪でつかんだ獲物は手ごたえがない。それはただの布なのだ。
そして代わりに待ち構えていたのは、ルブラの持つ槍の先。
こんな次第で、ダンジョンの怪鳥はあっさりと討伐された。ほかの冒険者もこの作戦を取り入れ、それぞれ工夫をこらした模様を布に描いて怪鳥をおびき寄せている。
魚がひらひらついた槍を持った冒険者がいても、笑ってはいけない。怪鳥のいる中層以降に挑む腕利きの冒険者グループだ。
この布でできた魚が作られた元の世界も、おそらく巨大怪鳥の脅威と戦う世界だったのだろう。わたしの正しい鑑定眼がこの世界の冒険史を変えたのだ。
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