【鑑定その7 大魔術師の拠点調査 後編】
「よっす! エデュっち、今回もよろしく!」
ルブラが現れた。聞けば、彼女こそが今回のエデュリスの調査の護衛役で、勝手にわたしの工房を待ち合わせ場所にしていたことがわかった。いつも空いてるからいいんだけど、一言ぐらい言って欲しい。
「また護衛はあなたなの」
エデュリスはちょっと困った顔をした。
「まあいいのですけど」
このあたりで腕利きの冒険者と言えばルブラの名前は真っ先に挙がるのだ。とはいえリッチを倒したのも彼女だから適任だろう。
ルブラは「お菓子見っけ」と言い、わたしがうなずくと、エデュリスのおみやげのお菓子をぱくぱくと食べだし、わたしの飲みさしの紅茶をぐびぐび飲んだ。
「ところでエデュっち替えのパンツちゃんと持った?」
「失礼ね。持ったわよ」
「持ったんだ……」
ルブラは笑う。わたしもちょっと笑ってしまう。エデュリスがわたしたちを気まずそうに睨む。
「エデュっちすぐ漏らすからなあ」
「そんなことを人前で言わないでくださる?」
「それはいいけど、ほかの仲間に余計な事言わないでよね。エデュっち一言多いんだから」
「そのエデュっちというのはやめていただきたいですわ。助教授と呼んで欲しいですわね。これでも王都では……」
「そういう肩書で威張るのが冒険者にはいちばん嫌われるんだよなあ」
ルブラはため息をつく。じっさい、エデュリスが余計なことを言うのはほとんどクセみたいなもので、本人にもさして悪気はない。逆に言えば直らない。
なんにせよ。そんなわけで、わたしはダンジョンに出かけていくふたりを見送った。
その後どうなったかは、エデュリスは話したがらないので、おおむねルブラからの伝聞による。
ダンジョンの中にある妖精の支配領域を通り抜けるとき、エデュリスは持ち前の一言多さを発揮して妖精を刺激してしまい、妖精たちの嫌がらせに逢いひどい目にあったという。
その後もちょっと大きなクモ、暗がり、コウモリ、幽霊、なんかちょっと怖いオブジェ、巨大魔獣、冒険者のイタズラ、人の顔に見える壁のシミなどが怖がりのエデュリスを襲う。とはいえ何とか無事に帰ることができたらしい。
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