【鑑定その3 ポポーポポポポと鳴る神像 後編】

「めちゃくちゃ魔物が寄ってくる……」

 と、ルブラは報告した。

 神像の鳴らす音楽に大ウケしたルブラは、面白がってこれをダンジョンに持っていったのだ。仲間に見せたかったらしい。

 そしてダンジョンでポポーポポポポを鳴らし、冒険者仲間でひとしきりゲラゲラ笑ったのち……ふと気づくと、彼女たちは魔物の大群に囲まれていたという。

 そして彼女は、ひときわ汚れて帰ってきた。


「あー疲れたもう。ちょっと寝るね」

 そう言ってルブラは工房にあるわたしの仮眠用ベッドを勝手に使おうとする。いつものことである。

「いいけど、ベッドが汚れるからお湯で体洗ってからにして」

「はいはい」

 勝手知ったる他人の家というやつで、ルブラは慣れたようすで金だらいと湯を用意し、ちゅうちょせず鎧と服を脱ぎ始める。

「おっしゃフロだー!」

「ちょ、ちょっと外出てるから」

 わたしのほうが気をつかって研究所を出る。


 工房の外に出ると、荷車に乗せた雑多な戦利品があった。

 確かに魔物がたくさん寄ってきたというのは本当のようで、戦利品もゴブリンの武具だとか、魔物の牙や毛皮など、じつにたくさんあった。

 激戦のあとという感じだが、わたしが興味を持つようなものはそんなにはなさそうだった。ルブラもとりあえず、と言う感じで持ってきたのだろう。


 その山をぼんやり眺めていると、近所に住む商人のビリディスが目ざとく寄ってきた。雑貨商を営んでいる若い男で、細身で大人しそうな外見とは裏腹に、商売については押しが強い。たまにうちに来ては仕入れをしていく。その時も勝手に戦利品の値踏みをしだした。


 どうせルブラのお湯あみが終わるまで暇だからと、ビリディスと立ち話をした。すると彼は【やかましい神像】に非常に興味を持ちだした。なんでも、そんなに魔物が寄ってくるなら客も寄ってくるだろうという。

 けっきょく商談成立となって、ビリディスは喜んでその神像をそこそこの値で買っていくことになった。

 じっさい、その像は街の名物になり、彼の商店は客入りは増えたそうだ。異界の商売の神の像なのかもしれない。

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