第10話

畳み掛ける様に花火が連続して打ち上がり始め、前半戦のクライマックスが始まった。


彼女は少し首を竦めて、怯えながらも花火に魅了されている。


『大丈夫?』

彼女の耳元で声を掛けた。


『ちょっと怖い』


心配しながら様子を見ている事に気付いた彼女は、左腕に抱きついて来て、肩に頬を当てながらも花火を見上げている。


鳴り止まない花火の音に、彼女の抱きついてくる手の力が強くなる。


右手で彼女の手を握り、左手で彼女の肩に手を置き抱き寄せる。


『ありがと…』

微かに聞こえた彼女の言葉。


右手に伝わる彼女の手汗が、花火の音が怖いのか、肩を抱かれて密着した事による焦りなのかは分からない。



前半戦のクライマックスが終わり、落ち着きを取り戻した彼女が言った。


『こんなに凄いとは思わなかった〜』


抱きついていた事を恥ずかしく思い、平静を装って誤魔化そうとしている事がハッキリ分かった。


『ビビってたでしょ』

少しニヤつきながら彼女をみた。


『そんな事…無いよ…』

彼女は動揺が隠しきれていない。



『キャー! 』

雷が近くに落ちて、あちこちで悲鳴が聞こえた。その一人が彼女だった。


『怖い〜』

平静を装って離れていた彼女は、驚いて抱きついて来た。



『雷神様ありがとう』

彼女に聞こえるように言った。


『雷神様嫌い〜』

彼女は涙ぐみながら応えた。

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