第8話

当日になり、車で彼女の自宅近くまで迎えに行く。


夕陽に照らされて、白いワンピース姿の彼女の笑顔が眩しく映る。


『その勝負服、眩しくて見ていられないよ』

見ていられないなんて、そんな事はないのに軽く褒めて持ち上げてみる。


『ありがとう。ノックアウトされた?』

彼女もかなりノリが良い。


『いや、まだまだこれから』


顔を見合わせて笑いながらも、お互いに相手の気持ちを懸命に読み取ろうとしていた。



『花火は遠くからしか見た事無いから、近いと音が凄そうで怖いな〜』

か弱い姿を見せて、彼女は少し不安な様だ。


”守ってあげる”と言いたいところだが、どうしようも無い。


『耳を塞いでも、身体に響くからどうしようも無いんだよね〜。止めとく?』

後で『騙された〜』と言われない様に布石を置く。


『がんばって我慢する〜』


『我慢する程では無いと思うけど、無理なら言ってね』


『うん』



車を駐車場に入れ、幾つかの露店に寄りながら桟敷席を目指す。


最初は疎らだったものの、次第に人混みが激しくなり始めた。


露店で買った物を片手にまとめ、空いた手で彼女の手を引く。

彼女は少し動揺した様だが、繋がれた手を握り返してきた。

逸れてしまっては面倒だ。



桟敷席の近くまで来たら益々人が多くなり、手を繋いでいては思う様に進めなくなってきた。


彼女の肩を抱き寄せ、顔を覗き込みながら声をかける。

『大丈夫?もう少しだから。』


彼女は頷いたが少し目が泳いでいる。


軽いジャブが効いている。

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