第7話

彼女を驚かせようと、彼女の職場に突然訪問した夜、渡された連絡先に電話をした。



彼女は、一緒にバーで飲んだ時、指の上にグラスを置かれて身動き出来ない状況で、何をされるのかドキドキしていて内心取り乱していたらしい。

その後も平静を保つのがやっとの状況で、連絡先を交換せずに別れてしまった事を悔いていた。


気持ちが落ち着いてから、当時の事を思い返す度に寂しい気持ちに駆られ、また会えるとは思っていなかったと言った。


連絡先を交換していなかった相手と再会出来た喜びで、終始彼女の声が弾んでいる。


彼女の嬉しい気持ちが伝わってくる。



『2回ともスーツ姿だったけど、ネクタイを外した姿も見てみたいな…』

何という殺し文句…


恋愛経験が多そうに見えなかっただけに、素直な気持ちから出てきたセリフだと感じた。



『じゃあ、コッチは勝負服が見たい』


『えっ?!、、、良いよ』


一瞬の戸惑いと、これから先を察したかの様な返事が来た。


言葉には出さないが、お互いに恋の駆け引きに対峙する事になった。



彼女も次第にノリが良くなってきて、自然な話の流れから、花火大会を見に行く約束をした。


以前から友達家族と見に行く予定だったが急に都合が悪くなり、行けなくなったと連絡があったばかりだった。


しかも滅多に取れない桟敷席。


既に料金を払っているので、キャンセルするより誰かと行ってきて欲しいと譲ってもらっていた。


その事を彼女に話すと、桟敷席で見ることは今までなかったので凄く喜んでくれた。


彼女がどんな勝負服で来るのか楽しみになった。

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