第5話
2日後、彼女のいる金融機関に新規開拓営業として訪問する事にした。
時間は、開店後の慌ただしい時間が過ぎてひと段落すると思われる11時に設定。
駐車場に着いて、名刺の一枚に連絡先を裏書する。
そして、名刺の上から2番目に差し入れた。
彼女達は、十中八九間違いなくカウンターにいると予想していた。
店に入ったら案の定、彼女達はカウンターにいた。
近づく私を見て、彼女達は一瞬でこちらに気付いた。
カウンター越しに名刺を2枚重ねたまま取り出し彼女に渡した。
『支店長様にお会いしたいのですが、いらっしゃいますか?』
名刺を渡す時、彼女にだけ判る様に僅かに名刺をズラして見せる。
明らかに動揺を隠せずにいる彼女と、その様子を気にしながら視線をこちらに向けている二人の女子行員からも動揺が伝わってくる。
彼女は裏書した名刺をカウンター裏に隠し、もう一枚の名刺を持って支店長の所に行き面談の了解を取り付けてくれた。
応接室に案内され、すぐに支店長も入ってきた。
先日の飲み代をおごらされた事を告げ口をしに来たとでも思ったのか、応接室にお茶を持ってきた時もぎこちない。
支店長とどんな話をするのか、凄く気になる様子の彼女。
しばらく応接室で通常の営業活動をして、支店長に礼を言って部屋を出る。
話が終わった事に気付いた彼女だったが、彼女達には目線を合わせずに外に出た。
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