第2話 迷子②
「はぁ…結局、聞いちゃったな。」
あんなに、誰かに質問するのを嫌がっていたのに、ステーションに着いた途端に心変わりしてしまったのだろうか。
チグハグな行動をしてしまった。
誰に言われるわけでもなく、自分の、内だけの問題なのに、マオは何故か、恥ずかしさと敗北感を抱いていた。
この際一度も二度も関係ない、タクシー乗り場に行こう。
タクシー乗り場に行くことには、苦労しなかった。マオがいくら方向音痴でも間違える事はない。何故なら、ステーションにタクシー乗り場など無いのだから。
明確なタクシー乗り場というものは、ないが、さすが都会だ。表の道路には、沢山の自動車が走っている。
その中でも、一際鮮やかな色の自動車が目立っているだが、一台ではない。
全体的に黄色だが、前のナンバープレートから後ろのナンバープレートまで、車体を一周する黒い帯の様な模様が入っている。ザ•タクシーと言った具合だ。
実車とあるものも空車とあるものある。
マオは、空車の文字が浮かぶタクシーを、手を振り止めた。
「乗るのかい?」頭に上に尖った、かわいらしい耳のついた運転手が、ウィンドウを開けて怪しみながら言った。ああそれと、かわいいのは頭の耳であって、運転手のおじさんでは、ない。マオに男をかわいいと言う趣味は、無いのである。
「あ、いや乗りたいわけではなく、話を聞きたくて。便利屋ワトソンというところにいきたくて、それで話を聞こうかと思いまして。」
と、彼がそう言うと
「そこなら知ってるよ。てか、路上では、迷惑になるから中入ってくれよ。これで怒られるのあんたじゃなくて、俺になるしさ。」
「じゃあ、そこまでお願いします。」
これまでマオは、かなり歩いていた。それは、ステーションへの道のりだけの事じゃなく、その前からである。
実のところ、彼は、ラーメン屋に立ち寄って以来、座ってもいない。
歩くスピードを緩やかにしたり、立ち止まって飲み物を買う、といったことは、したが、足を曲げて休むことをしていなかった。
なので、歩かなくても良いのなら、それに越した事は、無かった。
「なんだい、結局乗るのかい。今までの立ち話は、なんだったんだ、ってはなしだよ。まったく。」
嫌味を言われた。まあ、特に気にしていないが。
「それじゃ、便利屋ワトソンまでお願いします。あ、しっかりとメーター管理して下さいよ。俺、金あんまり持ってないですから。」
厚かましくもタクシーの運転手に要求をする。運転手も「全く、嫌な客だな。」と、冗談混じりで言った。
それからタクシーは、エンジンを掛け直し、道路に戻って運転を再開した。
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