Aランク配信部を追放されたVオタの僕、配信の神と出会いS級タレントとともに最強のVTuberグループを作る~みんな僕のこと好きすぎまである~
49話 先生がPONして、エロめなコスプレ写真を僕に見せてきた
49話 先生がPONして、エロめなコスプレ写真を僕に見せてきた
「上山君。安心してください。配信部の公式アカウントで、窃盗の事実はないと発信してもらいますから」
「ありがとうございます……!」
嬉しくて目元がうるっときた。
竹田先生が親身になってくれる人で、しかもSNS音痴ではなく仕組みや操作方法を知っている若い人で、本当によかった。
先生は動画を停止しようとしスマホに手を伸ばした。テーブルに置いてあったスマホを持ち上げようとして指が想定外のところに触れてしまったのか、画面が切り替わる。
大ヒットアニメ『皆殺しの刀』に登場する人気キャラ八百万まつりのコスプレ写真が表示された。
胸元がバーンと開かれていて谷間がくっきりで露出度が高い。
「ひっ!」
先生の喉から、息を勢いよく飲み込んだ時の、笛のような音が鳴った。
慌てて指先が滑ったのか、スマホは弾かれて机の上を滑り、僕の手前まで来た。
「ま、待って!」
竹田先生はテーブルの上に身を乗りだして、前のめりになりすぎて、まな板の鯉というか、机上の教師になった。足は完全に床から離れて、テーブルの上で胸が潰れている。
こんなに慌てるってことは、まさか、このコスプレしているの、竹田先生?!
ピポンッ♪
A.「なんて美しい女性なんだ。一目惚れしちゃった……」
B.「先生、八百万まつりのコスプレ似合ってますよ」
C.「うっわ。教師のくせにコスプレ……」
ぎゃあああああああっ!
なんてタイミングで出るんだよ!
そして、このクソラインナップ!
どうすんだよ。SNSの炎上問題を親身に相談してくれている教師だぞ!
Aは無理。教師に一目惚れはまずい。
Bもあかん。ほぼ確実にコスプレ女性は竹田先生だけど、気づいていないフリをしないと。
Cなんて言ったら、人として駄目だろ。
あああ……。カウントダウンが進んでいく。
助けて、心の中の艦長……。
『これなら、Aの一択っしょ!』
え?
A?
そうか。Aなら、「これ、誰なんですか?」と続ければ、僕が写真の女性イコール竹田先生だと気づいていないアピールできる。
「なんて美しい女性なんだ。一目惚れしちゃった……」
「え?」
「先生のアカウントですよね。フォローします!」
オートで余計な台詞が一つ続いちゃった!
「ひぃぃぃ……」
「ひぃぃぃ……」
先生が机にうつ伏せになったまま変な声を漏らし、僕も一緒に感情と正気が抜けていく音を垂れ流しにした……。
つらい。このまま生徒指導室を出て行くべきなのだろうか。
竹田先生はスマホを取ると手で机を押し、モゾモゾと体をくねらせて後方へ下がっていき、ガタガタと音を鳴らしながら、椅子に戻った。
先生の髪はボサボサになり、着衣は乱れ、はあはあと息を荒くしている。
「……」
「……」
クソ選択肢がまた出てくる前に、僕から何か言わないと。
「えっと……。本当に写真が素敵だったので、今のは口が滑っただけです。すみませんでした。今見たことは絶対に誰にも言いません。アカウント名を覚えていないので、フォローもできません」
「……」
ヤバい。返事がない。
先生はうつ伏せになっている。
知られたくない秘密を知られてしまって、感情や思考がバグって処理落ちしかけているのだろうか。
「……あの。教師ってコスプレしたら駄目なんですか?」
「……」
「……似合ってるし、別に隠さなくてもいいと思います。僕もアニメ好きだし、親しみ湧きます」
「……」
「……あ、あの。本当に凄くいい写真だと思いました。本当です。フォローしていたら絶対に『いいね』していました。『皆殺しの刀』めっちゃ好きなんで、本当に、スマホの壁紙にしたいくらいさっきの写真いいと思いましたし、好きです」
あっ!
先生の頭の周りで、小さいピンク色のハートマークがふよふよ飛んだ。
頭上にピンク色のハートが一つ浮いている。
ヤバい。瀕死だ。そこまで精神的なダメージを与えてしまったのか……!
本心を言ったんだけど、信じてもらえなかったか。
しょうがない……。
僕は自分のスマホを取りだし、Xitterを表示する。
「先生……。交換条件というか、取り引きというか、なんて言えばいいのか分からないんですけど、誰にも言わない証拠というか。これ、僕のXitterアカウントです。リンクしているの、僕が中学時代に書いた小説です……。先生の趣味の件が流出したら、えっと……。この小説をお昼の校内放送で朗読してくれてもいいので。とにかく、これが、人に知られたくない僕の一番恥ずかしいことです……。自分をモデルにした主人公が魔王の力に目覚めて、闇の武闘大会で優勝します……」
「……」
「えっと……。あ、あと、スマホ、校則違反で、学校に持ちこんでます。すみません。写真のこと誰にも言わないので、スマホの没収は許してください」
ど、どうだろう、この理論。
少しは信頼を勝ち取れただろうか。
「……分かりました。お互い、何も見なかったことにしましょう」
先生がようやく顔を上げてくれた。めっちゃ顔真っ赤で子うさぎみたいにプルプル震えている。
「はい。僕は何も見ていません」
「あっ。何も見なかったと言いましたけど、配信部の件はなかったことにしません。これから先生は部室に行ってきます……。あ、すみません」
先生は椅子を回転させて、背を向けた。
「少し時間を置いてから、行きます」
「あ。はい」
それから僕は数分間、先生のメンタルが復活するのを待った。
年上の異性と二人きりだと、妙に落ち着かない。
やがて、竹田先生は僕の方に向き直った。表情は落ちついている。
「それでは行ってきます」
先生が立ちあがるので、僕も立ちあがる。
「僕は……」
「言いあいになるといけないので、ひとまず、同席は不要です。誹謗中傷を簡単に認めるとは思えないので、先ずは部費と窃盗の件をXitterの公式アカウントで否定してもらいます」
「分かりました」
「では、状況が進展したら連絡します。もし、周囲からの嫌がらせなどがあったら、すぐに報告してください」
「はい。ありがとうございます」
先生がドアを開けると、廊下から明かりが差しこんで、随分と視界が明るくなった。
SNS炎上事件の前途も明るくなる……そう期待したい。
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