Aランク配信部を追放されたVオタの僕、配信の神と出会いS級タレントとともに最強のVTuberグループを作る~みんな僕のこと好きすぎまである~
43話 深夜なのに、部屋の前に誰かが来る。僕は震える妹を抱きしめる
43話 深夜なのに、部屋の前に誰かが来る。僕は震える妹を抱きしめる
明らかに部員の誰かが、僕に罪を被せようとしている。
そして、ぱじめちゃんのXitterアカウントまで、僕に罪をなすりつけていた。
――【謝罪】先日のイベントでまだ公式発表されていない情報を公開してしまいました。用意された台本をそのまま読んでしまい、このようなことになってしまい申し訳ありません。台本担当者を退部処分といたしました。
それだけじゃない。
追加チケットの件も、行列が誘導されなかったことも、飲料の転売も、余った飲料をトイレに廃棄したことも、すべて僕が指示したことになっていた。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫……。これはなんの証拠もない完全な嘘だし、一部の人が書いているだけだし、そんなに大きく炎上しないはず……」
大丈夫、心の中でも自分に言い聞かせる。
「ほら。明日学校だし、寝よう。こんなの、すぐに流れるし」
「でも……」
「大丈夫だって。参加者一〇〇人のイベントがそんなに炎上するはずないって」
「うん……」
玖瑠美が布団に戻るのを見届けてから、僕も布団に入る。
大丈夫、だよな?
ネットで本名を晒されてるけど、書かれていることは事実無根なんだし……。
オンライン視聴のチケットが何枚売れたかは知らないけど、せいぜい数百だろうし……。
あっ。そうだ。こんなことより、ゲーム世界にいかないと。
きっと、異世界のスケールが一〇〇分の一になって、冒険しやすくなっているはず。
終わってなかったら、また『バニーガールの園』かな。
配信世界に……。
駄目だ。どうしてもSNSが気になってしまう……。
僕は配信部に関する炎上記事のコメント欄をリロードする。特に新しい書き込みはない。
Xitterは……。こっちにも、新しい呟きはない。
で、でも、僕が部費を盗んだという呟きは拡散されていて、インプレッションが一万を超えている。一万人に見られたの?
いや、大丈夫だ。一万人ってことは、日本人の一万人に一人しか見ていないってことだ。
こんな証拠もない書き込みなんて、誰も気にしない。
動画だって、僕が他人の物を盗んでいるように見えないこともないだけだ。前後の経緯が不明だし、モザイクだってかかってるし、この動画を見て、僕が窃盗をした決定的な証拠だと信じる人なんていないはず……。
呟きの返信や引用などをチェックしても「この動画だけじゃ分からん」とか「本当に窃盗なら、ネットに晒す前に警察に通報したら?」といった、書きこみがある。
そうだよ、そう。ネット民は冷静だ。ちゃんと、正しく物事を見てくれる。
けど……。「お。ターゲット発見か? 追いこめ」とか「住所特定しろ」とか、火を大きくしたがっている書きこみもある。
怖い……。どうなってしまうんだ……。
それから、一時間か二時間か分からないけど、僕はSNSをチェックし続けた。とっくに日付が変っているから、新しい情報は増えていないようだ。
SNSなんてチェックせずに早く寝ないと……。
あ。違う。ユウが待ってるからゲーム世界に……。
そうじゃなくて……。
あっ!
なんだこれ、なんだこれ!
Xitterの過去ログを探っていたら、数時間前に「近所だから来た」というメッセージとともに、アパートの写真が投稿されていた。
なんでここが分かったの?
住所が晒されたの?
配信部員の嫌がらせ?
僕は自分の住所でXitterを検索してみたが、見つからない。他のSNSでも見当たらない。
なら、晒されたわけじゃなく、同じ学校の人がふざけている?
「お兄ちゃん……」
「玖瑠美……。眠れないの?」
「うん……」
「ごめん。僕のせいで……」
「お兄ちゃんは悪くない……」
「ありがとう。ほら。玖瑠美は何も心配しなくていいから、寝な」
「うん……」
ヴロロロロロッ……。
外の通りからエンジン音が聞こえてきた。自動車にしては小さいから、バイクだろうか。
「……!」
「お兄ちゃん……」
「だ、大丈夫。同じアパートの夜勤の人が帰ってきただけだよ……」
カタン……。カンカンカン……。
嘘だろ……。アパートの外階段を上る足音が聞こえる。
「お兄ちゃん……」
玖瑠美が僕の布団に侵入して抱きついてきた。
僕は少しでも安心させたくて、抱き返す。
「大丈夫。大丈夫だから。いったん離れて」
「やだぁ」
「大丈夫。ここにいるから」
僕は玖瑠美を離し、上半身を起こしてスマホのカメラを起動する。
もし誰かがドアをこじ開けようとしたら、撮影してすぐに通報してやる……!
カンカンカン……。
足音が部屋の前まで来た。
ギュッ。
玖瑠美が腰に強くしがみついてくる。
カンカンカン……。
足音は通り過ぎていった。
そして、隣の部屋からガコンッと小さな音がした。足音はまた部屋の前を通り過ぎ、再びエンジン音が聞こえ、遠ざかっていった。
「新聞配達だった……」
「そうなの?」
「うん……」
寝れないまま布団で過ごすうちに、いつの間にか三時を過ぎていた。
「ほら。大丈夫。明日、起きれなくなるから、もう寝て。当たってるか当たってないか分からない胸が当たってるから、離れな」
「当ててるの……」
「うっそだろ……。何も感じない……」
「うん」
からかってみたが、玖瑠美のテンションは低いままだ。
消え入りそうな声で返事をしたまま、自分の布団に戻ろうとはしない。
追い返すのは可哀相だし、狭いけど我慢するか。
僕自身、今は不安でいっぱいだから、情けないけど玖瑠美が近くにいてくれると落ちつく。
「今日だけ一緒に寝るけど、その代わり、スマホの電源を切って。いったん、忘れて、本当に寝よう」
「うん」
僕はスマホの電源を消して、布団に入った。
きっと大丈夫。明日、起きたら炎上は収まっているはずだ……。
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