Aランク配信部を追放されたVオタの僕、配信の神と出会いS級タレントとともに最強のVTuberグループを作る~みんな僕のこと好きすぎまである~
23話 後輩ちゃんの頭上のハートが増えた。回復したってことだよな。良かった
23話 後輩ちゃんの頭上のハートが増えた。回復したってことだよな。良かった
「とにかく気をつけてね。平気そうに思えても、蓄積していた疲労が一気に出てくることとかあるし」
「……! は、はい……。顧問の先生にも同じこと言われたことあります……」
「やっぱり。部活が休めないなら、練習メニューを変更してもらうとか」
「はい……。先輩、優しいんですね」
「あ、うん……」
後輩女子のHPの最大値がいくつか分からないけど、ハート一個とは考えにくい。
どう見ても、この子は消耗状態だ。絶対に休んだ方がいい。
そうこうしていると遠くから「すみませーん。ボール」という声が聞こえてきた。
どうやら僕の頭に命中したとは思っていないようだ。
僕は近くに落ちていたボールを拾って投げ返した。
「ぶつけたのに謝らないなんて酷いと思います!」
後輩女子が頬を膨らませて憤慨しているから、僕はなだめる。
「本当に全然痛くなかったし」
「でも……。こんなの酷いです……」
後輩女子はまだ何か言いたげだ。
けど、僕にはこういうとき、どういう言葉をかければいいのか分からない。
ピポンッ♪
あっ。また、メッセージウインドウが表示された。
もしかして、僕が会話に困ったタイミングで出てくるのか?
A.「悲しい顔じゃなくて、可愛い笑顔を見せてほしいな」
B.「君は優しいんだね。俺、君に惚れちゃいそうだよ」
C.「うるさいな。少し優しくしたくらいで、調子に乗らないでくれ」
選択肢の内容、なんか全体的におかしくない?!
待って、どうしよう。Aが点滅して、カウントダウンしてる。
Cみたいな酷いことは言えない。そうなってくると、消去法でAかBだ。
待って、Bもアウトだろ、これ。
というか、Aもアウトじゃねえか!
ヤバイ。もう一回選択肢を読み直し――。
ティロン♪
「悲しい顔じゃなくて、可愛い笑顔を見せてほしいな」
やっちまった!
「ひゃいっ?!」
後輩女子は素っ頓狂な声を上げると、大きく仰け反った。
頭上のハートが点滅している。まずい。キモくてダメージを与えた?!
「先輩、今――」
「君の笑顔を見る度に、僕の心が温かくなるんだ。だから、君に涙は似合わない。僕のために微笑んでくれないか?」
くーっ。やっぱり勝手に続きの台詞を喋ってしまった。
「も、もー。いきなり変なこと言わないでください。あ、焦ったじゃないですか。メロン艦長の台詞か何かですか?」
よ、よし。口が自由になってきたし、後輩ちゃんの言ったとおりにしておこう。
「あっ、うんっ、そう。昔、シチュエーションボイスで、こういうの言ったんだよ。けっこう初期だし、君は知らなくてもしょうがないよね。ははっ!」
「ですよ、です。はい。もー。本当に焦りました。私みたいなゴリラが可愛いとかないですよね?」
ゴリラ?
え?
あだ名?
すぐに喋らないと、また選択肢が出てきてしまうかもしれない。だから、早く自分で喋るんだ!
「いや、普通に可愛いと思うけど」
「なひっ?!」
「ゴリラというのは、多分、柔道部だから腕力強いイコールゴリラってイメージがあって、力に対する褒め言葉だと思う」
「にににっ」
あ。
後輩女子の頭上にハートが一つ増えて二つになった。
良かった。なんでか知らないけど、今、HPが回復したようだ。
女の子のHPが最大でどれだけあるのか分からないけど、僕が六個だから、小柄な女子は二個で十分かもしれない。
さて。教室に戻るか。
ん?
後輩女子が歩きださずに、何やら聞き取れないレベルの超絶早口でブツブツ言ってる。
「小中ずっと柔道漬けだった私にまさかのモテ期到来? 会ってからずっと優しいし。もしかして先輩、私に一目惚れしちゃったの? あっ。掃除場所が近くだし、もしかして三学期になってからずっと私のこと気になってたのかな。野球のボールから護ってくれるなんて、凄い勇気が要ると思うし。愛の力……? ど、どうしよう。ドキドキが止まらない。攻められる前に攻めた方がいい? 前、メロン艦長が女性リスナーからの恋愛相談で『壁ダァンッして顎くいってやって好きだって言って、逃げられなけりゃ脈ありなんよ。キスしろ! 男はそれで落ちる!』って言ってた。……校舎はすぐそこ……。ヤれる! 身長差はあるけどジャンプすれば届く……! 攻めろ! 落とせ! 全中優勝の実力を見せてやれ! 先輩から借りた漫画に載ってたすんごいキスするんだ!」
「えっと。大丈夫?」
「ひゃい?!」
「なんかブツブツ言ってたけど、大丈夫?」
「だ、だだ、大丈夫です。だから、しょ、正面から見ないでください。て、照れちゃいます」
「え?」
「わっ、私、部活があるから!」
後輩女子はくるっと振り返って、ピューッと走り去った。
部活開始前から体力を消耗しそうな程の全力疾走……。長めのスカートとはいえ、かなり際どくめくれ上がっているけど、大丈夫?
ん?
急停止したかと思ったら、全力疾走で戻ってくる。
「はあはあ……」
「VのトイレRTAみたいな全力疾走せんでも……。えっと……。どうかした?」
「一年A組の
お、おう。そういえば自己紹介していなかったな。
ダッシュで戻ってきてまで名乗らんでもいいのに……。
「えっと……。同じく。上山。誠一郎です。二年A組の」
「同じく? ……あっ。私は『かみやま、みか』じゃなくて『かみや、まみか』です。神の谷です」
「あっ。ごめん。神谷さん。同じ名字かと思った」
「そ、それって、将来的に同じ名字になってくれって……コト?!」
「何が? ねえ、さっきから、どうしたの?」
「じ、人生最初で最後のチャンスかも。まだ高校生だけど、超前向きに善処します! で、でも、い、今は、紛らわしいから私のことは『まみか』って呼んでください!」
「あっ、うん。……え?」
「それじゃ、失礼しました! これからもよろしくお願いします!」
後輩女子、改め、真美香さんはぺこり、というか、ギュンッて感じでお辞儀をすると、また元気よく走り去っていった。
あ。スカートが捲れあがってパンツ見えそう……!
惜しい。スパッツだった。
おっといけない。初対面女子のパンチラを期待してしまった。しかし、それは高校生男子なら当然の反応と言える。
せいいちろう、悪くないよねぇ?
……ところで、名字だけなら何も紛らわしくないんだし、『神谷さん』と呼べでいいのでは?
妹以外の異性を名前で呼ぶなんて、無理だよ。
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