リアル生活にモテ期到来、そして、ざまあ!
15話 朝、起きたら妹が僕の布団の中にいた
朝。
僕は目が覚めると、いつの間にか僕の布団に侵入していた妹を注意する。
「おい。起きろ」
「んー。おはよう……」
「おはよう。もう高校生になるんだから、僕の布団に侵入するのはやめろ」
「えー。寒いんだもん……」
「寒いからという理由で他人の布団に入るのが許されるのなら、北海道の家は布団が一つしかないことになるだろ」
「うっわ。屁理屈、うざ……」
「うざいやつの布団に入るな」
「お兄ちゃん。朝だよ。早く起きないと遅刻しちゃうぞ!」
「お前、よくこの状況でラブコメ妹ができるな……」
「やー。本当に出てかないで。寒くなる。昨日チョコあげたでしょ。『メロン艦長出た! 最高! 玖瑠美ありがとう。愛してる』って言ったこと思いだして」
「放せ。艦長のカードは出たけど、お前に愛していると言った事実はない」
「……あっ!」
「ど、どうした」
「中世ヨーロッパの農民とか、貧しい人は寒さを耐えるために同じお布団に入っていたと思う。一緒のお布団で寝れば二枚重ねできるしアドじゃない?」
「うっわ。屁理屈、うざ……」
「それ、玖瑠美が先に言ったやつー。真似駄目ぇー」
僕は妹をひっぺがして布団を出た。妹は布団に潜りこむから、外まで追いかけてはこない。
ねえ、世間の妹ってみんなこんな感じなの?
うちの、ちょっと甘えすぎじゃない?
両親がいなくて寂しいのかもしれないから、あまりに邪険にできないし困ったな……。
「うー。お兄ちゃんは異世界転移した時に備えて、同じ布団で寝ることになれておいた方がいいと思う」
……ッ。
特に深い意味のない冗談だと思うけど、異世界転移と言われてしまい、僕は心臓が高鳴るのを感じた。
気にするな。妹は、僕がゲーム世界に行っていたことなんて知らないはずだ。
「朝食、私が用意するよー。私の方が出てくまでに時間があるし……」
「布団を出てから言えよ。確かに家を出るのはお前の方が遅いけど、起きるのも遅いだろ」
僕は無人になっている妹用のかけ布団をめくって、僕の布団の上に重ねてあげた。
残った敷き布団の上に、パジャマの下が落ちていた。
なんなん、こいつの脱ぎ癖。こんなんだから寒いんだろ。
……ん?
うっそだろ。パジャマのウエストの内側に、裏地とは異なる、白い布が見えているんだけど。パンツ?
洗濯も僕が担当しているから見慣れている物を見間違えるはずがない。パンツだ。
こいつ、センシティブ系女性VTuberのオフコラボみたいなことしやがって。
呆れたり怒れたりするよりも先に、妹の才能が恐ろしくなってきた。玖瑠美ならマジで人気VTuberになれるかもしれない……。
配信部は退部になったけど、兄ちゃんが配信できる環境を用意してあげるからな……。
でも、頼む。センシティブ系じゃなくて清楚系になってくれ……!
僕は朝食を用意し、布団から這いでてきた妹に朝から二度目の説教。
「企業案件がこなくなるから、パジャマを脱ぐ癖は直せ。センシティブするのは、業界内で地位を確立できたあとだ」
「はーい。センシティブするのは、業界内でチーを確率できたあとにしまーす」
朝食を終えると洗濯をし、最近不幸続きだから御守り代わりにメロン艦長のカードを生徒手帳に挟んだ。
「行ってきまっする」
「行ってらー」
中学より高校の方が遠いので、家を出るのはいつも僕が先だ。
最初は平気だったけど、学校が近づくにつれて急速に気が重くなる。
今日も部活がないから普段より早く家に帰ることになるし、そのうち妹に感づかれる。
げ。校門前で、嫌な人が視界に入った。
配信部で僕に退部を宣告した川下先輩だ。
見知らぬ男子4人と一緒にいる。学校を挟んで家が逆方向にあるから、正面から近づきあってしまう。
……先輩の顔を見たら、怒りが再燃してきた。
川下先輩のYaaTubeチャンネル登録者数は一万人だ。僕の力で妹をVTuberにして、絶対に一万人を超えて見返してやる!
川下先輩は声質がよく歌が上手いから、歌ってみた動画を出しつつ、無料ソシャゲのプレイ動画(台本あり)を出しつつ、学校あるある動画で高校生っぽさを主張したら人気が出た。
しかし、僕は何度か指摘したんだけど、そこから先に行くためにはコラボが必要だ。
人狼ゲームやマインクラフォトのように、複数人で遊べて、かつコラボ相手と協力することも敵対することも可能なゲームで遊ぶことが、絶対に必要だ。異論は認めない。
僕は、メロン艦長がコラボ相手とお喋りして、時に喧嘩して時にてえてえして、そんな交流を見るのが好きだ。
だから僕はゲーム世界を、玖瑠美ひとりではクリアできないが、仲間と協力すればクリアできる難易度にするつもりだ。仲間と喧嘩してほしいから、現状のように仲間を攻撃してダメージを与えられる仕様のままにするつもりだし、レアアイテムを一個だけにして、盗めたりするようにする。
資源集めのような裏方は僕がする。玖瑠美とユウには喧嘩したりてえてえしたりしながら冒険をしてもらおう。
しかし、まだ、第三、第四のメンバーがほしい。配信世界には、あの異世界以外にもゲーム世界があると言っていた。四人いれば、カードゲームができるし、2VS2のゲームもできる……。
何処かから2人くらいゲストを連れてくるだけで、人狼ゲームもできる。
仲間だ。仲間を集めて、配信部にざまぁしてやる!
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