第6話

「なあ、青木って好きな奴とかいるのかな」

図書室で宿題をしていた郁弥が不意に顔を上げた。

礼音は向かいの席で宿題を片付けている。

「特に付き合っている人はいないよ。でも三室君love」

「三室かよ…… 」

「そう。学年人気No. 1の三室潤君」

郁弥は頭を抱えてしまった。

「彼奴かよ…… 」

三室潤。学年2位。野球部のピッチャーで1年生からエース。顔は超イケメンで何もかも揃っている。

「どうして?」

「いや、黒木の奴が気になるみたいでな」

「そうなんだ。でも、今は無理だと思うなあ

…… 」


「キャー!三室君!こっち向いて!」

こっち向くわけないじゃん。

「素敵!潤ー!」

呼び捨てだし。

礼音はグランドを取り巻く黄色い声の女子の間を通って行った。

その中に3人組で歓声を上げている女の子達がいた。

「三室君ー!」

萌香が叫んだ後、驚いたように礼音を見る。

「どうしたの?礼音も三室君応援に来たの?」

「全然。萌香と一緒に帰りたいと思って」

「うん。分かった」

萌香はそのまま礼音と一緒に女の子の中を通って行った。


「話って何?」

何も言わなくても萌香は察していた。

「普段は寄り付かないグランドまで来て……どうしたの?」

「萌香。黒木君の事どう思う?」

礼音は少し硬い表情をしている。

「同じクラスの黒木将磨君」

「別に……クラスメートの1人」

「萌香に気があるらしいの」

「悪いけど……三室君の事しか考えられない」

「そっか。分かった」

礼音はそれ以上はその話をしなかった。

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