第4話

「可愛気がないんだよなー。テストは常に1番だしさ」

廊下に張り出されたテストの順位表を見て笠井がそう言ってボヤいた。

近くには礼音がいる。

「何でも出来すぎるって可愛くないんだよ」

笠井が友人に言った。

「自分が出来ないからって僻むんじゃないぜ」

聞き慣れた声がしたので後ろを振り返ると、郁弥が立っていた。

「何だよ。補習組のお前が言っても説得力ないぜ」

笠井は鼻で笑った。

多少の優越感に浸っている。

「奥沢のトップは努力によるものだ。お前はそれだけの努力してるのかよ」

郁弥の言葉を聞いて笠井はブツブツ言いながら立ち去った。


「しかしお前、後6点で満点ってどうやってそんな点取れるんだ?」

郁弥はそう言って感心していた。

郁弥は補習組で山程の宿題を出されていた。

とても片付かないので礼音にヘルプを要請して来たのである。

「頼むよー。俺の頭じゃとても無理だからさ」

「しょうがないなあー」

礼音は苦笑いしている。

礼音と郁弥は写真部に入っている。

部活が終わると2人は帰り道にある図書館に寄った。


ファインダーを覗く時は別人のように引き締まった表情になる。

そんな郁弥を見るのは好きだ。

花が咲き誇る中に、カメラを近づけて写真を撮る。

礼音も郁弥も花の写真を撮るのが大好きだ。

丁度紫陽花の花が咲いている。

雨に濡れていた紫陽花はとても美しい。

その姿を余す事なく写真に収めた。

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