第15話
2002年 12月 冬
「被告を懲役4年6か月の刑に処する。 罪状は、有印書偽造、同行し詐欺罪。 また覚せい剤の使用である」
あの夜、捕られてからN県警察本部に移送されて一年近く立っている。
今日ようやく次郎の判決が下った。結局は、交通違反をした時に別れた後から照会をかけたらしい。
エヌ県警から逮捕状要請が出ている者を取り逃がしたと、次郎の地元のF県警は慌てたことだろう。
実際にその時取り逃がした警察官は叱責処分を受けたらしい。
その後結局は捕られているのだから、次郎には関係の無いことだ。
次郎が最後に捕られたのだと刑事から聞いた。
パルコたち中国人も先に捕られていたのだ。
警察での取り調べ調書も、楽なものだった。
前に捕られた人間たちが全部喋っているのだ。
全貌は明らかになり、後は確認作業のみを残すだけの状態で、要するに、次郎が一番悪いと言うコトの確認だ。
被害総額8億円、田舎のN県警が統括して全国をまたにかけた犯罪者グループを摘発した。
地元の新聞には一面を飾ったと聞いて、次郎は思わず笑ってしまった。
田舎警察署だから暇だったのだろうと思ったからだ。
被害弁償は全部銀行側がしたそうだ。
偽造の銀行印を見抜けない銀行が悪いらしい。
どうせ後から次郎は銀行側から訴えられて民事裁判にかけられるだろう。
しかし次郎は被害弁償などする気はサラサラない。
何年も懲役を務めるのだ、その後で何億も払える訳がない。
銀行側はどうせ保険に入っているはずだ。
一番罰を被るのは保険会社と言うことだ。
公判はすべて警察署から行った。
拘置所に移送になったのは、実に判決が下った後からだった。
接見禁止が取れると、すぐ影山が面会に来た。
なぜ自分に黙って中国人なんかと悪さをしているのかと、面会所でどやし付けられた。
自分は一切関係無いのだと言うスタイルを見せたのだ。
まぁ、それは始めから約束していたことだ。
次郎がすべてかぶれば良いのだ。
未決通算を差し引いても、4年は刑務所に入らなくてはならない。
気が重い限りだ。
「おい、お前。 壁にすがるな!」
「はぁ、すいません」
「壁が汚れるだろ。 分かったか!」
刑務所は、エヌ県にある N刑務所にそのまま下獄することになった。
まず一発目の新入考査工場に配属されてすぐのことだ、刑務官からどやし付けられてしまった。
壁にすがると壁の方が汚れるのだそうだ。
この時点で人間扱いはされてないのだと悲しくなってしまう。
エヌ刑務所はB級刑務所で、刑務所にもランクがあるのだ。
A級刑務所は、初犯刑務所。
B級刑務所とは、累犯、即ち2回目からはこっちに入れられるのだ。
その他にLA級、YA級、LB級などがあるが、LAはロングの初犯だ。
YAは初犯少年刑務所。LBはロングの累犯、と言ったものである。
ロングとは長期刑務所のことで、8年以上の刑を受けたものが下獄するところだ。
少年刑務所は26歳未満の人間が入るのだが、成人しているのに少年とは意味が分からない。
女子刑務所は、初犯も累犯もロングも関係ない。
男性の刑務所は大抵各県に1所ずつ存在するが、女子刑務所となると各管区に1所だけ存在する。
男と女では、犯罪を犯かす人間の数がこうも違うのだ。
女子刑務所には、一度入所してみたいと次郎は思っていた。
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