第2話

 当時、全国にあるヤクザ組織のほとんどが 不良外国人(中国人も含む)との交際を禁じていた。


 特に激しかったのは新宿歌舞伎町で、毎日のようにヤクザ組織と不良外国人組織とが小競り合いを起こしていた。


 ヤクザ組織のシノギと言えば、みかじめ、博打、等なのに対し、不良外国人のそれは 盗み、殺し、薬物売買、等 で 一貫性として相反する等の理由から 信仰、交際は御法度 等の通達が 全国のほとんどのヤクザ組織に萬栄していた。


 しかし、そんなものは建て前に過ぎない。


 ようは、誰に断って日本の国で悪さしよるんじゃい と言ったところだろう。


 日本の治安はワシらが守る、警察がナンボのもんや、ワシらは必要悪なんじゃ などと書かれた記事を読んだことがあるが、賛否色々あるだろう。

 

 やれ中国人だ、イラン人だ、だからと言って、全てが悪いのかと言えば それも違う。


 真面目に生活をしている立派な人間の方が断然多い。


 ヤクザ組織にしても、薬物御法度などと謳い文句にしている組織であっても、営利に関しては暗黙の了解で、使用が発覚して初めて処分される なんてことは よくあることである。


 立派な親分になりたいと心に決め、門をたたき なにが良くて なにがダメなのか 結局は分からないまま志半ばで断念した若者は多い。


 どこの世界でもあることだが、ずる賢い人間、要領が良い人間ほど出世するものだ。


 かく言う 次郎の属する影山組の上部団体も不良外国人との信仰、交際は御法度を謳っている。


 裕司がしきりと影山への発覚を恐れたのもこのためだ。



「おう、中田は連絡とれんわい」


「エ、コマルヨ、ソレ トテモコマルヨ」


「しるかボケ、とれんもんは とれんのじゃい」


「ダメダヨ、コマルヨ、ナカタサン ヤクソクシタヨ」


「そんなもん知らんわい。 帰れ 帰れ」


「ダメダヨ ヤクソクシタヨ オカネ モッタイナイヨ」


「ん、金?」


「ソダヨ、オカネダヨ モッタイナイヨ」


「金ってなんや? 儲け話しかい」


「ソダヨ、モウケハナシヨ。 タイキンヨ」


「…」


「ナカタサン、ヤクソクシタヨ モウケハナシヨ タイキンヨ」


「…」


「ニホンジン タスケイルヨ タイキンヨ」


「おい、それって ナンボになるんや?」



 1989年に六四天安門事件が起き、1990年頃から日本への不法集団密航が始まった。


 1993年までの中国人による不法入国のほとんどが福建省からの密航だったとされる。


 その後1997年に香港返還を迎え、その様式は変わり上海、北京と言った主要都市からも密入国してくる中国人も多くなったという。


 その背景の多くには 蛇頭(じゃとう)と呼ばれる密航を斡旋する組織の活躍があった。


 1998年頃には日本の漁師と組んで、日本に違法で密入国させるという手口が横行していた。


 日本の漁師側にはヤクザ組織が絡んでいる。 しかし2000年に入っては、その密航も激減している。


 結局は日本のヤクザ組織が手を引いた為だ。 中国人 1人が日本に来るのに300万のお金が要るらしい。


 勿論 密航でだ。 食うに食えず、貧しい中国人にそんな金があるはずがない。


 そのほとんどが借金である。


 担保は,家族である。


 借金を踏み倒したら、残された家族はどうなるか分からないぞ と言うわけだ。


 いわゆる人質だ。


 貧しい村の中から代表者を決め、村全体を担保という形を取って日本にやって来た娘が、日本の生活に染まり、日本人男性と駆け落ちをしたことによって、村人全員が 皆殺しにされたと言う話もある。


 中国では人の命は軽いのである。


 日本人は小さい頃から、命は大切だと言う教育を受けて育つ。


 世の中で一番大切なものは命だと、そこら辺の幼稚園児に聞いたとしても そう答えるだろう。


 次郎たちのような裏側で生きてる様な者たちでも、世の中で一番大切なものは命だと答える。


 しかし中国では違う 人の命がビックリするほど軽いのだ。


 世界人口の6分の1は中国人が占めている。


 6人に一人は中国人なのだ。 その人口難から、1夫婦1子制度なるものがあり、一つの夫婦には、子供は一人しか認められないのだ。


 2人目、3人目の子供には戸籍が与えられないなんて嘘のような話も耳にしたここがある。


 法律も厳しく、人の物を盗めば腕一本ちょん切るとか、殺人未遂=死刑、覚せい剤の所持=死刑、と日本とは比べ物にならないほど 厳しくアバウトだ。


 人口難の為、そうでもして人を減らさないと国が成り立たないのだろうが、どうかと思ってしまう。


 だから、日本に来て3万の金欲しさに人を殺したり出来るのかもしれない。


 しかし、そんな中でも、お金持ちの家に生まれた子供は幸せだ。


 華僑の出身で10人兄弟なんてざらにある話だ。


 どこの世界でも、金が物を言うのだろう。 話を少し戻すが、そうまでして日本に来て果たして利益になるのか?。


 答え、なるのである。


 多くは2~3年で借金を清算してしまうらとか。


 後はもう利益である。


 300万もあれば、一生家族が食うに困らない。


 密航できた中国人だが、女性であればいくらでも金にするすべはある。


 いつの世もそうだが、女性は身体が商品になるからだ。


 しかし、男性はそうもいかない。


 肉体労働 いわゆる3Kと言われる職に就けたとしても、女性のそれとは比べ物にならないくらい安い。


 それでも、蛇頭に支払う金額は300万と変わらない。


 そういった密航男性中国人たちが日本に来て悪事を働きだすのに そんなに時間はかからなかったことだろう。



「ワタシタチ7デショ、アナタタチ3ネ」


「おいおい、なに眠たいこと言いよんじゃボケ」


 取り分は中国人グループが7割で、日本人が3割だと言う。


「ミンナコレヨ。 イママデ ズットコレヨ」


「知るかそんなこと、折半にせんかい 折半に」


「ヨクバリ ヨクナイヨ」


「日本じゃ昔からこんなのは、取り半って相場は決まっとんや、折半じゃい折半」


「アナタタチ ナニモシナイ オカネトリニイクダケダヨ」


「その取りに行くのが一番大事やないんかい。 そんときなんかあったらどうするんや?。 日本人やないといかんのやろ。 リスクは大きいやないか。 ほんとなら俺らが7でもええくらいや!」


「ソレジャ ハナシニナラナイヨ」


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