第15話 手紙の差出人

 ◇


 目を覚ますとあれから2時間近く経過していた。


 そういえばみんなでご飯を食べようとしていたんだったと思い、急いでリビングに向かう。


 すると、すでにカレーのいい匂いが漂っており、全員座って俺を待っているようだった。


「ご、ごめん。寝ちゃってて」と、空いている席に座るとみんなが楽しそうにしながら話し始める。


「疲れたよね。もう少し寝てても良かったんだよ?」と、赤村さんが優しい言葉を話しかけてくれる。


「あっ、もう大丈夫」と、笑って返答する。


 それから昔話に花を咲かせていると、卒アルの話になった。


 どうやら、みんな実家に置いてきたままらしく、卒アルを持っているのは俺だけであり、俺の卒アルをみんなで見ることになった。


「うわ〜、これ懐かしい〜。修学旅行楽しかったよね〜。あっ、そうだ〜!今度みんなで旅行行こうよ〜!」

「...確かにいいかもね」

「私はパスかな。お金ないし」


 そんな普通に一通り思い出を語りながら盛り上がっていると、最後の寄せ書きページを開いたときに、あの手紙が出てくる。


「あっ...これ...」と、俺はすっかりわすれていたこともあり、折角ならこの手紙の主を聞こうとその手紙を手に取る。


「...これ、誰が書いてくれたの?」と聞くも、全員知らないといった感じの反応を示す。


「...え?この中にいないの?」と、困惑していると、安善さんが俺からその手紙を奪って中を見る。


「...告白の手紙じゃん。でも、確かにこの中にはいない字の書き方だね。って、あんたどんだけモテてたのよ」と、睨まれる。


 いや、そもそも4人に好意を持たれていたことさえ、俺は知らなかったわけだし...5人目の存在なんて知る由もない。


「夏樹くんを好きだって人は私たち以外にはいないと思っていたけど...」

「確かに〜。けど、卒アルの後ろに入ってたってことは高校の時の誰かだよね〜」


結局、その手紙の主はわからないままだった。

まぁ、誰かわかったところで、どうということもないのだが、もし5人目が存在するとしたらそれはそれで気になる。


 しかし、結局手がかりはないまま、その話は流されることになった。


 それからはご飯を食べ終わった後はそれぞれの場所で自由な時間を送っていた。


 俺は読書スペースで、コーヒーを飲みながら、お気に入りの作家の新作を読んでいると、安善さんが話しかけてくる。


「まだその人好きなんだ。変わらないね、上杉は」

「...うん。ミステリー小説好きだからね。最近はホラーも好きだけどね」


 それからたわいもない話をした後に、小さい声で囁くように俺の耳元でこう言った。


「さっきのは嘘。私はあの手紙を誰が書いたか知ってるの。でも、上杉には教えない」

「...え?」と、驚いた声を上げる俺に楽しそうに人差し指を口に当てて「内緒」と言いながら笑って去っていったのであった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093090061983157

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彼女を同僚にNTRられてヤケクソになったモブが、10年振りに高校の同窓会に参加したら何故か美少女四傑に迫られた 田中又雄 @tanakamatao01

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