第13話 図書室
放課後、暇なので俺は図書室に来ていた。
最近はここで本を読むことが俺のマイブームになっていた。
ハマっているのはミステリー小説。
それもかなり難解なものを中心に読んでいた。
ちなみにうちの図書室はほとんど人が来ないことで有名だった。
理由は2つある。
・新しい本があまりないこと
・怖い噂があるため
主にこの二つである。
一つ目に関してはそもそも図書室が普通の教室程度の広さしかないため、あまり量がないことも相まって、わざわざここを利用する人がいないのだ。
二つ目に関してはうちの学校の七不思議にやるところが大きい。
確か、女のお化けが出るとか言われてるらしいな。
しかし、少なくても俺はここに通い始めて、いまだに一度も見たことがなかった。
というか、ほとんど人を見たことがなかった。
図書委員的なものは存在するが、いたりいなかったりと、あまり活動的には見えなかった。
まぁ、そのほうが俺にとっては助かるのだが。
そんなことを考えながら、いつも通り図書室に入り、本を読んでいると、ふと扉が開く。
どうせ図書委員の人だろうと思って、特に顔を上げるわけでもなく、本を読んでいたのだが、その人は何故か俺の前で足を止めたのだった。
恐る恐る顔を上げると、そこに居たのは同じクラスの美少女四傑が1人、安善茶奈が立っていた。
「...今日、ニーナと話していた人じゃん。こんなところで何してるの?」と、言われる。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089940876081
「...あっ、ど、どうも...本を読んでます」
この安善さんという人はあまり男子が好きではないらしい。
他の四傑は男女問わず仲がいい人が多い傾向にあるが、この人だけは違った。
女子友達は多いが男子の友達は1人もいない。どころか、男子に話しかけられると嫌な顔をすることでも有名だった。
そんな彼女が俺に話しかけてきたのだ。
「...そういうことじゃなくて。家で読めばいいじゃん、本くらい。わざわざこんな人気のない...どころかお化けの噂すらある図書室で1人本を読むとか...アホなの?」と、相変わらず刺々しい言葉を放つ。
それはまぁ...ごもっともな指摘であるが、俺はなぜかここが落ち着くのだ。
「...まぁ、落ち着くので。ここ...」と、だいぶ端折って説明する。
「...ふーん?変なの」というと、彼女は図書委員の席に座る。
あぁ、そういや安善さんは図書委員なんだっけ?
そう思ってチラッと顔を上げると、こちらをジロッと睨んでいたため、すぐに目線を外す。
...こわ。
それからは特に何を話すわけでもなく、2人だけの空間が続いた。
ある程度区切りがついたタイミングで本を閉じて、俺は帰り支度を始める。
「...やっと帰るの?ったく、あんたが帰らないからこっちも帰れなかったんだから」
どうやら、鍵の管理のために彼女は俺を待っていたらしい。
そういうことであれば帰ったのに...。
「ごめんなさい」と謝るも彼女はそのまま、鍵を閉めるとそそくさと去っていってしまうのであった。
「...変わった人」
彼女に対しての第一印象はそんな感じであった。
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