第12話 クラス替え
「...はぁ」
高校に入ってから学校に来るのが億劫になった。
友達もいなく、いつも一人でいると自分がみじめに思えてくるし、だからと言って、今更構築されたグループに入る勇気もない。
ただ勉強して、一人でご飯を食べて、一人で家に帰る。
そんな日々が数か月続いたころに行われた10月の中間テスト。
勉強するしか暇つぶしがなかったため、7月に行われた期末15位、そして今回の中間テストは4位につけたのであった。
しかし、別に1位ではないし、それきっかけで今更誰かと仲良くなるなんてこともなく、ただぼんやりと、掲示された結果を眺めていた。
まぁ、それでも自分の頑張りがこうして目に見えて評価されること自体は嬉しく、いつか1位になってやる...そう思って1位の人の名前を見る。
赤村...玲亜...。あの美少女かよ。
そして、2位に目をやると、白田恵。3位は安善茶奈と続いていた。
かわいいくせに勉強もできるとか...反則かよ。
しかし、残り一人の金野ニーナの名前は掲示板に載っていなかった。
うん...失礼だけど安心した。
あんなギャルみたいな感じの人に負けたら、いよいよ俺のプライドはズタボロになる。
それからまた数か月経過した。
1年最後のテストもまたしても4位に終わり、悔しさに枕を濡らしながら2年に進学した。
2年に上がるタイミングで文系/理系の選択を迫られた俺は特に何も考えずに文系を選択した。
もし、俺の周りに友達がいれば、いや...もしくは検索エンジンで『文系 理系 男女割合』とでも調べておけば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
結果からいうと、うちの高校は元々理系特化ということもあり、多くの生徒が理系を選択していた。
その結果、5組中4組が理系クラスとなり、文系クラスは1クラスのみ。
更にやばいことに、この文系クラスは女子の割合が多く、7割が女子だった。
そして...更にやばいことに、その女子の中にあの美少女四傑が集合してしまったのであった。
◇2年 4月5日 8:10
「うわ...まじかよ...俺も文系にすればよかった」
「まじそれな...。てか、4人とも文系とかあるのかよ」
廊下から聞こえてくる声。
何の用事もない癖に2年5組の廊下の前を教室を覗きながら行ったり来たりする男子ども。
別に同じクラスになったところで何があるというわけでもないだろ...と、内心つぶやきながらも、彼女たちに目を移す。
元々仲が良かったのか、同じクラスになってすぐにあの美少女四傑は仲良く話すようになっていた。
性格的にはバラバラな感じもするが、むしろそれが良いのか、まるで親友かのようにいつも四人でつるんでいた。
そんなある日のことだった。
いつものように自分の席で一人、本を読んでいると、女子に話しかけられる。
「な~に読んでんの?」と、俺から本を取り上げる。
「...『無尽の殺人』。怖そうな本読んでるね。面白いの?これ」と、首をかしげながら俺に質問する。
その女の子とは...金野ニーナだった。
「ちょっ...返してよ」というと、いたずらな笑みを浮かべながらするりするりと俺の手を躱す。
「あははwウケるwなんかうちの犬みたいw」と、楽しそうにする金野さんを見て、少しだけドキッとした。
多分、自分がMであることをここで知った。
すると、飽きたのか「はいはいごめんね。返すよ」と、本を机に置く。
まったく、これだからギャルというのは嫌いである。
気ままに話しかけて飽きたら捨てる...。まさにおもちゃ感覚なのだろう。
そうして、もう一度本を読み始めるも、そんなことを無視して話しかけてくる。
「ね、いつも一人だよね?友達いないの?wいないなら私が友達になってあげよっか?w」
「...」
当然、無視して読書を続ける。
もう...どっかいってくれよ...。
「あー、無視するんだーwふーん?別にいいけど?wはぁい、今Yシャツのボタン外してまーすwほら、今見たら私の谷間が見放題だよ~?w」
絶対に嘘である。これで俺が目線をそちらに向けた瞬間、罵倒するに決まっている。
今後もことも考えて、ここは何があっても見ない...。見ちゃいけない。
「いいの~?見えるよ~?今見ないのはもったいないよ~」
...いや、待て...これは見ないと終わらないやつでは?
さっさと見てしまって終わらせたほうが早いのでは...?
断言する。決して誘惑に負けたわけではない。
これは戦略的敗北に過ぎないのだ。
ちらっと、ほんの一瞬目を移す。
しかし、そこには本当にボタンをはずして胸元が露になった彼女の姿があった。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089864055853
「うわw見たwエロすぎw」
そうして、ケタケタ笑いながら帰っていく彼女...。まったく...エロすぎるのはあんただよ!と思った瞬間、エロすぎなのではなくエロ杉と言ったのかと理解する。
なんで俺の名前なんか知ってるんだろう。そう思いながら少し硬くなった息子をなだめる俺であった
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