第11話 シェア開始と過去の話
「やっぱりおしゃれでいい部屋だね」
「そうね〜。私の家に雰囲気似てるわ〜」
「...オシャレすぎてちょっときついわ」
「上杉...色々とありがと」
10年前には想像すらつかないこの現状にただ苦笑いを浮かべるしかなかった。
傍目から見れば羨ましいほどの光景かもしれないが、誰かを選ぶということは誰かを選ばないということだ。
そんな決断、自分には到底出来るわけもないのだ。
いや、だからこそ彼女たちはきっとシェアハウスという選択肢を選んだのだろう。
真正面から向き合って、その気持ちに逃げずに答えるべきだ。
そう思いながら、一旦、自分の部屋に入る。
部屋の中は元の家に比べればだいぶ狭い。
基本的にはベッド、デスク、トイレとシャワーと、テーブル置き場とクローゼットで構成されており無駄なスペースはない。
しかし、部屋の中が狭い分、共有スペースとリビングはかなり広くなっていた。
リビングには据え置きで大きなテレビがあるし、本を読むスペースに、在宅ワークできるような空間まである。
一応、内見は済ませていたから新たな発見とかは特にないが、何となく狭い部屋の方が落ち着ける気がした。
今までは、ふと隣の空き部屋を見て、元カノのことを思い出し、憂鬱な気持ちになっていたが、そういうことも次第になくなっていくようなそんな気がした。
部屋には既にベッド等は設置されていたため、一旦ダイブする。
はぁ...落ち着く。
最近の仕事のバタバタや、引っ越しが終わったことで安心したのか、いつの間にか夢の中に落ちて行った。
そして、夢に見たのは高校時代の過去の記憶だった。
◇12年前
昔の俺は勉強が少しできるだけの、どこにでもいる平凡な高校1年生だった。
中学時代はそれなりに友達がいて、楽しくワイワイやっていたのだが、俺の通う高校は家からやや遠いこともあり、同じ中学からのやつは数人しかおらず、仲のいい人は0人だった。
それでも、どうにか友達くらいできるだろうと思っていたが、最悪のタイミングで人見知りを発症し、声をかけることができず、わずか1週間でぼっち確定となった。
「...はあ」と、自分の現状に嘆いていると、クラスの男子が何やら騒ぎ始めている。
「1、2、3、4組に1人ずつ馬鹿みたいに可愛い女の子たちがいるんだが!?」
ちなみに俺のクラスは5組。
正直、女子の顔面偏差値は平均的でずば抜けて可愛い子はいなかった。
「まじ!?見にいこうぜ!」
くだらないと内心思いつつも、その噂はだんだん学校内で広まっていき、俺も一度は見てみたいと思い、ある日の昼休み、用事もないのにわざと遠回りして順番にクラスを覗いて行った。
まずは1-1組。
窓際の席で人混みの中にいる明らかに輝く女の子が1人。
黒髪のショートヘアで、男女問わず楽しそうに話しながら、その輪の中心に彼女が居た。
初めて見たものの、パッと見て、それが噂の人物であることがわかるくらいに別格の可愛さを誇っていた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089803874821
これは...確かに美少女である。
そう思いながら、1組の教室を通り過ぎて、2組の教室を横目に覗く。
またしても窓際で優しく微笑む白髪の美少女に目が行く。
女子のお友達と思われる子と、何やら談笑しているのだが、白髪ということもあってか、目立つ上に顔も可愛いと来た。
恐らくハーフなんだろうと思いながらも、その作り物のような美しさに言葉を失う。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089803965186
名残惜しい気持ちを抑えつつ、3組の教室を覗くとそこには今までとは少し違う空気が流れていた。
虚空を見ながらパンを食べている茶髪ポニーテールの女の子が1人。
可愛さは間違いなくこのクラスでダントツであるものの、纏った空気は人を寄せ付けない雰囲気が漂う。
ダウナー系というか、1人でいることを好むインキャ美少女のような感じだった。
今までで一番親近感を抱きつつも、別に話しかける勇気などあるわけもなく、次の教室に向かう。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089804109056
最後は4組である。
さて、どんな人がいるかなと思って覗くと、そこには男子に囲まれて、面倒くさそうな顔をしている金髪ギャルが1人。
確かに可愛いが...刺々しいオーラを放っており、周りの女子たちは嫌な顔で彼女を見つめる。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089804419692
あー...こういう空気嫌だなー。
そんなことを考えていると、こちらを向けてきたので、急いで目を逸らす。
本来であれば学校に1人のはずのマドンナが4人舞い込んだような奇跡。
そして、彼女たちを指して、誰かが美少女四傑と呼んだ。
そんな奇跡に感謝しながらも、どうせ自分には関わりはない。
そう思っていたのだが...。
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