第63話 45日後──④
ミヨクは魔法の天才だ(2度目)。
ただ、ファファルも魔法の天才だ。なにせ世界の時間を無視して不老であり続け、世界を空間魔法で閉じるとか訳の分からない事をして何処にでも瞬間移動が出来るようにしているのだから。
そんな2人の天才魔法使いのどちらが強いのか?
……その前に、ミヨクがこれまでに世界の時間を止めた時にファファルに殺されている事はノーカウント(その魔法を使用している時は他の魔法が使えない状態となっている為)とする。
──では、改めてどちらが強いのか、
……なのだが、ファファルは世界の時間を無視する事ができ、同時にその効果により敵からのあらゆる攻撃を防ぐ事が可能だった。
その時点で既に無敵。
──なのだが、
実はこの魔法は世界や神にはあまり好ましく思われてはいなかった。なにせ世界に住んでいる身でありながらそのルールを無視しているのだから。
故に、それがこの2人に依怙贔屓的な差を生む結果へと繋がってしまっていた。
ミヨクとファファルの争いに関しては、世界と神はミヨクの味方であった。世界のルールを破っているファファルよりもミヨクに肩入れをするようにしているのだった。
端的に言ってしまえば、魔力の上乗せ。あくまでもファファルに対してだけなのだが、ミヨクはファファルよりも魔力が強くなり、ファファルの空間魔法は一切効かず、また実は時の魔法で彼女の空間魔法を解き不老を解除する事も可能であった。
圧倒的な優位性。
だが、ミヨクが今までそれをやったのは一度きりで、試してみただけという感じであり、その時もファファルにはバレていなかったので、ファファルはその事実を知らなかった。
何故ミヨクは嫌いなファファルを今まで殺さなかったのか? それは、まあ彼の性格というのもあるのだが、何よりも自分が世界の一強となる事を拒んだからであった。
俺にも制限があった方がいい。特に世界の時間を止める魔法を使う際には、と。
したがって、
ミヨクとファファルが本気で殺し合いを始めたら、十中八九がミヨクの勝利であった。
◇◇◇
──が、
今まで幾度となくミヨクを殺し続け、あわよくば世界の時間を止めている時以外でも殺そうと企ていたファファルが、1000年もの間ミヨクのその優位性に気付いていない筈はなかった。
普段あの馬鹿 (ミヨクの事)に吾の魔法が通じないのは、吾が世界のルールを無視しているせいか? と憶測ながらも実は気付いていた。
故にファファルは、
ミヨクが本気で戦いを挑んできたこの瞬間、自身を閉じ込めていた空間魔法を自ら解き、世界の時間を尊重する事で世界のルールを守り、ミヨクの優位性を無いものとしていた。
「お前は不死だからな。だから世界の外(たぶん宇宙の事)に捨ててやる」
ファファルはミヨクにそんな恐ろしい言葉告げると空間魔法を──いや、その前にファファルはバタンと前のめりに勢いよく倒れ、ついでに仮面が割れた。
ミヨクは何が起きたのか分からず呆然としていたのだが、何かこの光景に思い当たる節があり、推察を開始した。
こいつ、何で急に気絶したんだ? 俺は何もやってないけど……まさか自分の周りの空間魔法を解いたのか? それで1000年ぶりに時間を感じて脳が急激に疲労したのか? 俺は1000ぶりに時間を感じた事がないからそんな事があるのか分からないけど、でも確かに1000年ぶりに時間を感じると頭が変になりそうだよな……いや、そもそも1000年ぶりに時間を感じるってなんだ? そんなの聞いた事もないから意味不明すぎるぞ。いや、それよりも何でコイツは自らの意思で空間魔法を解いたんだ…………あっ! まさか俺の優位性を見抜いていたのか!? だとしたらコイツとんでもないヤツだな。ただの馬鹿だと思ってたのに。いや、マジで俺は俺でお前の空間魔法は効かないぞと鷹を括っていたけど、ヤバかったかも。そもそも今の俺は魔力をかなり失っているし……。本当に世界の外に捨てられるとこだったかも。俺は不死だけど、いや不死だからこそそれって絶対にヤバいよね。いや、そもそも本当に俺の優位性が無くなったのかも分からないんだけど……でも、なんだよコイツ、本当に恐ろしいヤツだな。言うか普通、世界の外に捨ててやる、なんて。言うか普通そんな言葉。なんだよコイツ、本当に恐ろしいヤツだな……。
そして、ミヨクは久しぶりにファファルの仮面の外れた美しい顔 (とは思っていないが)を見ながら思っていた。
コイツは危険だ。今までも気付いていたけど、改めてコイツは危険だ。時の魔法でコイツの時間を寿命まで一気に進めて殺してしまおうか、と。
だが、そうはしないのがミヨクであった。
「……って俺は誰も殺さないんだけどね。“その為の時の魔法”なんだから」
ミヨクは人を殺さない。
ただ、今回の世界三大厄災の2人よる対決は、ミヨクに軍配が上がったようだった。
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