第42話 リドミの大陸の夢の魔法使い②
100メートル程の並木通りを30分くらいかけて通り抜けると、そこには人々の賑わいが広がっており、幾つかの商業施設の前を経由して、噴水のある公園を抜けると、一際大きな建物の前に着いた。
──魔法学校、火の章。
校門に記されたその文字と、タイミングよく聴こえてくるキーンコーンカーンコーン。それに対してマイちゃんがすぐに反応を示した。
「えっ? 学校? ミョクちゃん、ミョクちゃん! 学校だよ! 学校! オラ、初めて見たよ! これが学校なんだね。キーンコーンカーンコーンって言っているよ!」
と、物凄く興奮しながら。
「ミヨクの母校か?」
ゼンちゃんがそう質問した。
「いや、俺はこの町の出身ではないから違う。けどこの国の町には必ず魔法学校があって、そこに通うのがこの国に住む人の義務となっているんだ。それでここを卒業すると国の中心街(都市のような場所)にある本校に入学が出来るようになって、そこを卒業すると、晴れて1人前の魔道士と成れるんだ」
ミヨクはそう言った。また解説者みたくなっているなと思いながらも、マイちゃんにそう気付かれるのを恐れながら割と早口で。
「……分かっているミヨク。でも、オイラも1つだけ質問させてくれ。本校を卒業してようやく魔道士なのか? 大魔道士じゃないのか?」
「大魔道士は、魔道士を卒業してから自分で魔力を高めて成るものなんだ。だから大魔道士に成れずに、魔道士で生涯を終える人も沢山いるよ」
そう言い終えた後でマイちゃんがチラリとミヨクの顔を見上げてきた。が、それはマイちゃんの目の前を蝶がひらひらと横切っていった事で難を逃れた。
「ミョクちゃん! 蝶々! 蝶々だよ! 見て、見て! 蝶々、蝶々だよ!」
……ただ、これはこれで鬱陶しかった。
──2分後。
「マイちゃん。残念なお知らせがあります」
ミヨクは急に改まってそう言った。
「──実は学校には来たけど、別にこれから学校編がスタートするわけじゃないんだ。ただ、校長に会いに立ち寄っただけなんだ。学校は関係ないんだ」
すると、
「えっ!?」
と、マイちゃんはまるで雷に打たれたかのような表情で凄く驚いた。
「……えっ、嘘? これから学校に通って、友達とかいっぱい作って、放課後に買い食いとかしたりして、それで、それで、恋の話とか、キャー! 恋の話とか、キャー! もういっそ恋とか、キャー! とかしたりするんじゃないのミョクちゃん?」
「うん。大変申し訳ないんだけどしない。この物語はそんな感じじゃないから、ごめんねマイちゃん」
「この物語って何? 何のことを言っているの? って、やだよミョクちゃん! オラ、皆で買い食いとか、恋の、キャー! とかしたい、したいよ!」
「いや、俺そもそも卒業生だし。もう1000歳以上だから恋ってのも割とキツいし……って、ところでマイちゃん、放課後とか買い食いとかって何処で覚えたの? そんな言葉は学校経験者じゃないと知らないよね?」
「魔王が教えてくれたんだよ。他にも、遅刻とか早退とか早弁とか、廊下に立ってろ! とか知ってるよ。凄いでしょ? えへへ」
魔王──オアの大陸の、8等身のスタイルで、手足がスラリと長くて、紺色のスーツ姿で、グレー色の長髪で、それを掻き上げると白い歯で爽やかに微笑む、イケメン魔王。当然にどこかの魔法学校の卒業生なのだが、何かイメージが崩れるなとミヨクは思った。なにより、アイツ悪い言葉ばかり教えやがって。と思った。
けれど、
「ねえ、ねえ、ゼンちゃん知ってる? 座学でたっぷりと寝て、そこで蓄えた力は実技に回せ。って諺があるんだよ。魔王は筆記は赤点だったけど、実技だけで卒業した凄い人なんだって」
「ふーん。オイラはよく分からないけど、凄い事なんだろうな。あの魔王がそう言うんだからな」
と、マイちゃんの興味がそちらに移ってくれのは良い事だった。
──が、
「そんな諺は存在しない! アイツ、マイちゃんに悪い言葉ばかり教えやがって!」
とミヨクは憤った。
そして、それからミヨクはマイちゃんとゼンちゃんに学校では座学がいかに大事かを語り始めた。けれどそれはマイちゃには退屈な時間だったらしく、とても辛そうな表情をしていた。あーあ、魔王から聞いた、先生のカツラを火の魔法で燃やしてやった! 事件の方が断然に面白かったし、ゼンちゃんにも教えてあげたいな、と密かに思っていた。
ちなみに余談(マイちゃんのマークが厳しくて説明し辛かった)だが、魔法学校の本校で校長を務めた者は、学校以外でも魔法を教える資格を習得した事となっており、外交が乏しいオアの大陸でユナやペルシャが魔法を習得していたのはその為であった。更にちなみになのだが、癒しの魔法とは4つの基礎魔法のどこにも組み込まれている初歩魔法であった。
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